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仁義なき女の園にバトルあり “新宿の仇を小岩で討った”女の怖い執念

 女の園に戦いあり。どの店にもキャストたちの派閥というものができる。派閥のない仲良しキャバクラでは競争意識が下がり、店全体の活気もなくなる。ある程度の抗争は必要なのだ。 しかし、多勢に無勢となるとバトルではなく、イジメになってしまう。

 スカウトを通じて、小岩のキャバクラ『I』に移った葉山奈々瀬さん(仮名・24歳)。彼女はそこで、因縁の相手と再会。地獄の日々が始まった。
 「店のナンバー1として紹介されたのは、昔、新宿のキャバクラにいた頃、お店の女の子が一丸となってイジメていたマリモ(仮名)だったんです。アイツが小岩にいたとは…」
 奈々瀬さんらのイジメっぷりは、相当ヒドイものだったようだ。

 「新宿時代のマリモは、とにかく挨拶ができない。指名替えさせておいて平気な顔をしてる。店服を嫌がる…とことんルールを無視する子で、どの派閥にも属してなかったからイジメの対象になった」共通の敵がいることで、敵対するグループ同士が一致団結するのは世の常。その店でもマリモさんをターゲットに、仲間意識が強まった。 
 「最初はみんなで集まって、ロッカーで説教大会。それでもマリモはシラッとした顔してた。泣けばまだ可愛いのに、強がるからエスカレートしちゃったんだろうね。口紅の中身をクレヨンに替えたり化粧ポーチを便器に捨てたり…」
 極めつけは、マリモさんが一度お腹の調子を悪くして、トイレで大便した事実を逆手に取り、あんまりな名前で呼んだことだろう。 全く想像力のカケラもないストレートなあだ名が『ウンコ』である。
 「違う違う、ウンコじゃなくて、最後は子供の子がついて“うん子”なのね」
 どういうニュアンスの違いなのかは分からないが、どうやら『うん子』の方が、より屈辱的な気分を味わわせることができるようだ。「途中からは、“うん子マン”とか呼ばれていましたね。あとは“便器マン”とか。きん肉マン系ですね」キャストたちの間の隠語ならまだしも、「え〜! うん子マンのいる席つくのイヤ〜」と言った用法で日常化していったという。
 「店長やマネージャーには、“うん子”とか“うん子マン”とか、客の前で汚い言葉を使うなって厳重注意されたけど、逆に“あっ、やっぱ汚いんだ”っていう意味を再確認しちゃって」

 そして、とうとうイジメは最終段階に入る。「グループ客とかで、場内でマリモをつけようとすると、『あの子、お店でウンコばっかりするから“うん子マン”って呼ばれてんだよ…マジで呼ぶの?』って客にも言うようになっていったんですね」
 ボーイもマリモさんを上手く付け回すことが難しくなって来た。必然的に扱い難い女の子として、店の中の痛々しい存在となってしまったマリモさん。結局退店を余儀なくされたのだった。

 それから2年、奈々瀬さんはナンバー1嬢となったマリモと再会。
 「無視されるかと思ったら、“キャー、久しぶりです〜”とかって。何かすごい愛想いいの。それが逆に怖かった。このままスンナリ行くわけないよね、って感じ…」
 その予感は的中。マリモさんは、イジメていると思われないようなヤリ方で奈々瀬さんをいたぶり始めた。一緒のテーブルにつくと、話題から糸口を見つけ、奈々瀬さんが知られたくないことへと水を向けてくるのだ。悪意のカケラも感じさせない無邪気な笑顔を浮かべて。
 「奈々瀬さんもほら、前に性病になったことあったじゃない。カンジダだっけ?」「…淋病…」この調子でボディーブローをお見舞いし始めた。スタッフは気づかずともイジメ臭に敏感なマリモ派の女の子は、彼女の真似をし始めた。「タイミング悪く、膀胱炎になっちゃったんです。キャバやってる子には結構多いんだけど。ガマンするのが一番いけないから、しょっちゅう席を立ってトイレに行かなきゃならないでしょう…」
 そこでついた、彼女を指す隠語が『しっ子』。『うん子』の仕返しの右ストレートだった。次はどんなパンチが入るか、いっそ一気にKOしてもらいたい奈々瀬さんである。

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