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新重賞今昔物語 1999年マイルCSを制したエアジハード

 この20年ほどで最もレベルの高かった世代を問われれば、多くの人が1995年生まれと答えるだろう。凱旋門賞2着のエルコンドルパサーに、グランプリを3連覇したグラスワンダー。さらにGI4勝のスペシャルウィーク。そして今回紹介するエアジハードも、この世代を語るとき欠かせない役者の一頭だ。

 デビューは97年12月。新馬戦を圧勝すると、続くカトレア賞も完勝した。この2戦はいずれも1200メートル。有り余るスピードに加え、父はサクラバクシンオーなどを出しているサクラユタカオーのため、クラシックは微妙に長いかと思われた。しかし陣営は皐月賞TRのスプリングSに駒を進めた。
 ところがここで、思わぬ弱点を露呈することになる。スタート前にゲート内で大暴れ。出遅れて4着に終わったのだ。距離適性以前の気性難。このためゲート再審査のペナルティーが課され、しかもこれをクリアするのに時間がかかった。結果、皐月賞には出走すらかなわなかった。だが、ここでじっくり立て直されたことが後の充実につながる。気性の成長とともにゲート難も解消。98年の秋には、GIIIの富士Sで初重賞Vを達成した。

 99年はまさに快進撃だった。春の安田記念で初GI制覇。その前の京王杯SCで2番手を進みながらゴール前で差されたグラスワンダーを、今度は後方からマークしてハナ差逆転した。
 迎えたマイルCSはまさに敵なしだった。夏場の調整に狂いが生じ、前哨戦が毎日王冠から天皇賞・秋に変更されたが、そこでスペシャルウィークの3着と大健闘。その走りが評価され、圧倒的な単勝1番人気に支持された。
 道中は自信満々に7番手。キョウエイマーチが刻むラップは、半マイル通過45秒9と非常に速かったが、余裕すら感じさせるフットワークで4コーナーを回った。直線は同じような位置にいたキングヘイローとブラックホークが追いすがる。だが、並ぶ間もなくあっさり突き抜けた。2着キングヘイローにつけた1馬身1/2差は、このレベルの短距離戦では決定的といっていい。
 前年の年度代表馬タイキシャトルに続くマイルGIの春秋制覇。普通の年ならジハードも十分代表馬の有資格者といえたが、この年は同世代のエルコンドルパサー、スペシャルウィーク、グラスワンダーが大活躍。代表馬争いはこの3頭で紛糾し、結局エルコンドルが受賞した。ジハードは最優秀短距離馬と父内国産馬のタイトルを獲得したものの、ある意味、不運な名馬といえるかもしれない。

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