都内在住のサラリーマン、丸田さん(仮名、48歳)だ。
「逆援助」「逆サポ」「女性エスコート」といった迷惑メールはうざいが、同じ逆援助でも、“リアルの求人”なら、女性とセックスしてその人からお金まで貰えたのだろうか−−。
丸田さんが広告に記載のフリ−ダイヤルに電話をしたのは、昨年の春、休みの日。「少しでも家計を支える為」(丸田さん談)に、家族に内緒で真面目に応募したのだ。これ以上に時間の融通が利くようなバイトは、ほかに見つからなかった。
「まず身分証をFAXして下さい」
男の声がした。
新宿で25歳位の腰の低い男と会い、すべて言うとおりにして、丸田さんは面接に通った。
「あなたのプロフィールの登録料金として一万円掛かります。では、マッチングがあった時に連絡します」
なにか腑に落ちない、というより、内心、受かったのでほっとした。
2週間後、その男から連絡がきた。
都内某所、高級ホテルの上層階の部屋のドアをノックすると、別の20歳位の男が出てきて名刺を出した。
「本日は社長令嬢の20歳女性会員様で、今日は初お顔合せのみと、忙しい中お越し頂いていますので、あまり時間がとれず、3000円のみ報酬が出ます」
男は続ける。
「以前他の男性会員様と顔合せの際、話が合わず、駄目だったんです。ですから会話を大事に楽しませて下さい」
「なるほど、わかりました」
「では、今下に待ち合わせているので、呼んできますので。お待ちください」
しばらく経って、20歳には見えず30歳位の自称社長令嬢が現れた。
「どうもですー」女性は笑顔を見せた。
お酒が趣味らしく、
「あたしの住いが埼玉、会社が都内なので、来週夜7時に待ち合わせしましょう」そんな話の途中で、
「トイレに行かせて下さい」
トイレで何やらあわてて電話している様子が伺えた。そして、
「ごめんなさい。じゃあまた」
女が急いで部屋を出てしばらくすると、さっきの男が戻ってきた。
「どうですか。アポイントメント取りましたか?」
「はい」
「アポが取れた方には、女性会員様に何かあった時の一時保証金として、預託金を預けてからお仕事に入っていただけます。金額ですが、50万円ほどになります」
「それはちょっと無理です」
思わず即座に断った丸田さんだったが、
「え? 消費者金融から借りれば良いんじゃね?」
男は態度を豹変させたという。
「その発想ありえないですよね? 詐欺ですね」
気丈にふるまった。しかし、
「あ? なんで?」
さらに威圧されて、逃げるためにはある程度話をまとめる必要があった…。
「わかりましたあー。では是非前向きにどうぞ。以降経理から連絡行きますので」
命からがら部屋から脱出した丸田さん、一目散にホテルを後にしたのである。
「辞めさせて下さい」丸田さんはその日のうちに連絡をしたが、
「あなたがそうならこっちにも考えがあるよ」
先ほどの男は電話を切り、それからしばらくは、毎日脅すような連絡電話が来た。
…結局、警察に被害届けを出してしばらくすると、
それ以上追い込むような電話は来なくなったらしい。
「地道に行かねばならんと自覚しましたね」
彼は最後に、そうつぶやいた。
うまい話はないものである、のだろうか。
「頼むからあなたに300万円振り込ませてください」、なんて言う女性などいるわけない!
それでも、だまされてしまうのが男かも。(了)