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児童養護施設の子どもたち−−苦労しすぎた子どもの心は壊れます

 昔、世界名作劇場というアニメのシリーズがありました。『赤毛のアン』『母を訪ねて三千里』『小公女セーラ』『家なき子レミ』『ロミオの青い空』など、どの作品も不遇な主人公がいじめや社会の理不尽と戦いながら、立派な人物に成長していく作品です。これらは美談として語られていますが、現実での不遇な状況下にある子どもたちは、はたしてどうなのでしょうか。

 親のいない子どもたちは孤児と呼ばれて、身寄りのない場合は児童養護施設に預けられます。これらの子どもたちは、施設に入園する段階で、心に大きな傷を背負っています。それは家庭崩壊などの大きな心の傷です。そして、施設入園後も、施設内で受けるいじめや体罰などの精神的苦痛を負った子どもたちは、その辛い体験を背負って社会に出るのです。
 幼少時に過度に精神的な苦痛を受けた子どもたちは、社会に適応する過程でも、さらなる大きな差別を受けるのです。そうした過程の中で成長した子どもたちが、社会への適応ができない社会不適応者、あるいは心の傷が深すぎて精神を壊され、精神障害者となる例も少なくありません。
 子どもには何の罪もないのですが、親のいない子どもたちは、一生差別と戦いながら生きなければならないのです。児童養護施設経験者から、犯罪に身を染める者が数多く出てしまう傾向が高い背景として、こうした社会から受けたいじめや差別が、原因の一つとして挙げられます。

 さらに、身寄りのない彼らはアパートを借りることすら困難です。なぜなら、彼らの保証人となる人物がいないからです。また、就職したとしても、学歴の格差が収入の格差に直結する現代社会においては、彼らの学歴の多くが比較的低いこともあり、結果として低い所得を受け入れて生活せざるを得ない状況が続いています。また現在の若年ホームレスの多くに、このような児童養護施設の卒園者が含まれているのも事実です。
 幼少時に、あまりに辛い経験をした子どもの多くは、その深い傷を生涯背負って生きていかなければなりません。
 これらの子どもに対する社会からの差別をなくすことが、今一番求められていることではないでしょうか。

(白井正雪)

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