問題となったのは、「若貴ブーム」空前の相撲人気だった92年ごろに近畿地方を中心に全国に流行した力士の勝ち星を予想して点数を競う「大相撲懸賞クイズ」。
同クイズは大阪市内の業者が85年から始めたもので、全国250の支部にウーロン茶やドライバーセットなどの商品を2000円で卸す。支部は地元の喫茶店やスーパー、クリーニング店、スナックなどを通し、1口3000円で商品と申込用紙を配布。応募者の申込用紙は逆のルートでの本部へファックスで送り届けられる。
参加者は幕内力士の中から10人をリストアップして10点から1点までに分けた枠に力士の名前を書き込み、点数に勝ち星を掛けた総合得点を競う。平幕から関脇の力士が横綱を倒す金星で点数は3倍、大関を倒す銀星で2倍になるなど、ほかにも細かいルールが設定されており15日間の総得点をほかの参加者と競う。
先場所の5月場所の星取り表から計算すると、10点に配置して最高点を獲得できるのは横綱・白鵬(15勝0敗)で150点。白鵬に次ぐ成績は平幕・阿覧(12勝3敗)で金星・銀星はないから120点。平幕・栃ノ心(8勝7敗)は4大関から銀星をあげたため、阿覧と同じ120点…というように、横綱・大関よりも好成績と金星・銀星が期待できる関脇までの力士を上位に配置するのが高得点獲得のコツだ。
このクイズは景品が豪華だったため流行った。優勝A賞が乗用車と大型テレビ、同B賞がハワイ旅行と大型テレビで順位に応じて家電商品や日用雑貨がもらえるほか、殊勲賞などを設け、応募者の3.5人に一人は景品が当たったのだ。
スーパーの売り場にクイズの星取表が張り出されるほどの過熱ぶりで、全盛期の92年ごろの参加者はひと場所14万人にもふくれあがり、4億円以上が動いた。
このブームに、近畿地方の消費者センターや日本相撲協会には「賭博ではないか」との問い合わせが相次ぎ、各都道府県警は参加費の3000円に相当する商品が実質的に500〜1000円程度で、逆に景品が極端に豪華なことなどから賭博性の有無についても慎重に検討し始めた。
これに対して業者はメディアの取材に対し、「クイズは、商品を売ったおまけで、法律にはふれないはず。商品に3000円の価値はないかも知れないが、相撲を楽しめて、景品を手にするチャンスもある」と反論。
しかし、各都道府県警がそれぞれ地元の業者に中止を警告。業者も警告に応じたため逮捕者は出ず、ブームは静かに終焉を迎えた。
ただ、現在もネットで検索すると、同じ形式でクイズを開催している業者はいくつかある。