事件を受けネット上では、2010年7月に起こった村崎百郎さん刺殺事件を思い出す人間が多いようだ。
「村崎百郎さんは、編集者を経て1995年ごろから鬼畜系、電波系を標榜するライターとして活躍していました。ダストハンティング(ゴミ漁り)を行い、その成果を記事にするといった特殊なスタイルで活躍し、一部の熱狂的なファンを獲得しました。2010年に読者を名乗る男性が家を訪れ、その場で全身を刺されて亡くなっています。のちに犯人は『著作の内容に騙された』と犯行動機を語り、統合失調症と診断され不起訴処分を受けています」(サブカルチャーに詳しいフリーライター)
福岡の事件と村崎さん事件の共通項は、加害者と被害者に直接の面識がなかった点であろう。村崎さんとhagexさんは「煽る」文章を得意とした。これは物書きとしてのサービス精神のあらわれだが、誤解も招きやすい。
「もう一つの共通項としては、犯人が居場所を把握し犯行現場に向かっている点ですね。村崎さん事件では、犯人は村崎さんと親交のあった特殊漫画家の根本敬さんの家へ向かったものの、すでに引っ越していたため村崎さん宅へ向かったようです。当然ながら両方の住所は公開されていませんが、ネット上の書き込みなどを細かく見て行けば特定はできないこともありません。今回の福岡の事件でも、hagexさんが来るセミナーの会場を犯人が把握しており、そこへ現れました。さらに、犯行現場はトイレであり計画的な様子がうかがえます」(前出・同)
生前の村崎さんは、ゴミから個人情報が筒抜けである事実をコラムで指摘するなど、ある種のセキュリティ評論家の側面も持っていた。今回の事件も、ネット上のトラブルからリアルな被害が生じており、ITセキュリティ管理の重要さが浮き彫りになったといえるだろう。hagexさんのご冥福をお祈りしたい。