「地上デジタル放送に切り替わる時期だったので、テレビが欲しいと思ってたんです。そのことをお客さんに話すと買ってあげると言われて…」
数十万円もするテレビを購入してもらえると聞いた明日香は舞い上がり、その申し出を承諾した。相手の客は飲食店の従業員として働いていたようで決して経済的に裕福というわけではなかったという。もちろん無償でテレビをプレゼントしてくれるわけもなく、客にはある狙いがあったのだ。
「テレビを注文するから、郵送する住所を教えてほしいと言われ、何も考えずに自宅の住所を教えてしまったんです。本当にバカでした…」
テレビをタダで手に入れた代償はあまりにも大きかった。客に住所を知られてしまった明日香は毎日のように自宅で待ち伏せされてストーカー被害を受ける。郵便受けは荒らされ、帰り道も執拗に付きまとってくるようになったという。明日香が冷たく接すると“あのテレビ、いくらしたと思ってるんだ”と逆上されるなどトラブルに発展した。
「お店のスタッフに相談して対処してもらったのですが、またいつかあの客が自分の前に現れるんじゃないかかと思うと怖くなり、お店は辞めました。現在はあの場所からも引っ越して、都内でOLとして働いています」
客に住所を知られずにプレゼントを送ってもらう方法としてベテランキャバ嬢達がよく使うのが数千円で借りられるレンタルスペースだという。レンタルスペースだとわからない住所表記の場所にプレゼントを配送してもらい、受け取ったら解約する。この方法で個人情報を守っているようだ。
相手に何かをしてあげることで見返りを求める感情は誰しも少なからずあるかもしれない。だからこそ客からの高価なプレゼントには十分な警戒と対策が必要になるのだろう。
(文・佐々木栄蔵)