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「渋井哲也の気ままに朝帰り」 仕事を辞めた時の連絡があるキャバ嬢

 「きょう、ラストなの! ねえ、来るの? 来ないの? どっち! 待ってるから、早くしてね」

 昨年末、携帯電話の留守番電話にそんなメッセージが入っていた。N嬢(21)の声だった。キャバクラとは別の仕事を探すとずっと言っていたが、なかなか辞めなかったN嬢だが、ついに辞めるときが来たのだろうか。

 ただ、以前も一度「辞めるから、一か月以内に来てね」と言われながらも、そのときは辞めないでいた。今度も、もしかすると辞めないのかもしれない、と思った私は、そのメッセージを聞いても、

 「どうせ、また酔っぱらっていいるのだろう」

 と思い、放置していたのだった。すると、新年が明けてからN嬢から電話があった。

 「ねえ、ラストの日来なかったでしょ? 待ってたんだからね」

 「え? ほんとに辞めたの?」

 「そうだよ」

 「でもさ、急にラストと言われてもこっちにも都合があるし、行けるわけないじゃん!」

 (本当はこのとき特に用事はなかったが、キャバクラに行くというモチベーションではなかったのだ)

 「そうだね。ごめんね。そのとき、酔っぱらって電話した」

 (やっぱりそうだったか)
 
 「でも、本当に辞めたから」

 「そうなんだ。じゃあ就職決まったの?」

 「これから。決まったら電話するね」

 「おう」

 「で、今度は誰を指名するの?」

 どうやら、本当に別の仕事を探すらしい。もともと専門学校で身につけた技術を活かして、都内で仕事を探していたのだが、見つからなかったので、キャバクラで働いていたのです。そして、今後こそ真剣に仕事を見つけるという。

 キャバクラ嬢がお店を辞めて仕事も辞めたとき、連絡がくる場合と来ない場合がある。その差はいったい何なのだろうか。

 数年前、私が当時最も仲良くしていた女子大生キャバ嬢(21)がいた。彼女曰く、看護学校に通いながら働いていた。看護学生のキャバ嬢はけっこう多い。かわいい顔をしているが、他と比べて目立つ訳でもなかった。ただ、その中でも気の遣い方が抜群によかった。

 この嬢の誕生日には何度か足を運んだ。酔っぱらってしまい、気がついたら家にいたということもあった。私が記憶をなくすまでキャバクラで飲んだのは、これまででこのときだけ。そのくらい、私はその嬢に気を許していた。

 ある日、その嬢のラストの日を迎えた。もちろん、人気だったのでラストの日は他の指名客とかぶり、ほとんど話せなかった。

 「今日はあまり話せなかったね。ごめんね。また電話してよ。こっちからも電話するから」

 この嬢との付き合いも3年くらいだった。よく店外でも会っていたし、メールもしていた。営業風味なコミュニケーションではなく、自然な気がしていた。だから、仕事を離れても、友達付き合いはできるかもしれないと思っていた。

 そう思ったある日、私は彼女に電話をした。すると、小さい声で、

 「なんですか?」

 と、半分怒ったかのようなニュアンスで答えた。友達と会っていたのか? それとも彼氏が近くにいたのか? 状況がまったくわからないが、気まずいのなら電話に出なければいいのに。

 しかし、あえて電話に出て冷たい印象を与える行為をしたということは、「もう、電話してこないで」というメッセージだったのだろうか。そう感じた私は、二度と彼女に電話をしなかった。もちろん、彼女からも連絡はいっさいない。

 では、N嬢はどうか。電話を切るとき、

 「また電話してよ。こっちからも電話するときもあるかもしれないけど」

 果たして連絡をしてもよいのだろうか。

<プロフィール>
渋井哲也(しぶい てつや)フリーライター。ノンフィクション作家。栃木県生まれ。若者の生きづらさ(自殺、自傷、依存など)をテーマに取材するほか、ケータイ・ネット利用、教育、サブカルチャー、性、風俗、キャバクラなどに関心を持つ。近刊に「実録・闇サイト事件簿」(幻冬舎新書)や「解決!学校クレーム “理不尽”保護者の実態と対応実践」(河出書房新社)。他に、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」(幻冬舎文庫)、「ウェブ恋愛」(ちくま新書)、「学校裏サイト」(晋遊舎新書)など。

【記事提供】キャフー http://www.kyahoo.jp/

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