あり余るスピードが両刃の剣となり、これまでは折り合いを欠き、自滅するシーンもたびたび見られたキンシャサノキセキだが、この日は“ちょっとだけ”違った。
道中は競り合うゴスホークケン、ウエスタンビーナスを前に見ながら3番手を追走。「他の馬を行くだけ行かせた。思った通りのレースだった」と鞍上の岩田騎手はしてやったりの表情だ。
「道中の手応えも本当に良かった。良すぎて苦労したくらい(笑)」。前がやりあっているにもかかわらず、行きたがる仕草を見せる。直線手前でも、なお掛かり気味になっているイダテンぶりには、岩田も苦笑するばかりだ。
一方で、「直線半ばまでは、まじめに走っていたけど、ゴール前だけフワフワしていた」。振り返れば前走・高松宮記念(2着)もいったん先頭に出たところをゴール寸前で差し込まれた。
とにかく自分が先頭にいなければ気が収まらない。だから、先頭に立てばもう満足。半年遅生まれの南半球産とはいえ、円熟の5歳を迎えていながら、これほど自己主張の強い馬も珍しい。
能力もピカイチなら、乗り難しさもピカイチ。「本当に負けられないレースで結果を出せてうれしい」。キンシャサの重賞挑戦はこれで10度目。かつて手綱を取ったトップジョッキーの安藤勝騎手や藤田騎手でも結果を出せなかった“きかん坊”を乗りこなした岩田の「うれしい」は、同じ「うれしい」でもほかの重賞とはひと味違う重みがあったはずだ。