指導者生活は秋季キャンプからすでに始まっている。その後も台湾ウィンターリーグを現地視察し、派遣された巨人選手たちを見守っていた。「練習は、質も量も求める」などの発言から厳しい指揮官になるだろう。
阿部二軍監督に育てられた若手が一軍で活躍すれば、巨人ファンも盛り上がるだろう。また、「阿部がどんな選手を育てるのか?」という関心も高まっているそうだ。
しかし、二軍監督の仕事は育成だけではない。コーチ、担当の裏方スタッフを含め、阿部二軍監督は“戦力補強のサポート”もしなければならないのだ。今オフの球界の動きを見ると、その重要性も窺える。
「シーズンが始まって、トレードなどで選手補強をしなればならない時が特にそうなんですが、他球団の二軍に埋もれている逸材、環境を変えてやれば活躍しそうな選手を見つけておかなければなりません」(ベテラン記者)
二軍に埋もれている逸材。楽天と千葉ロッテの間で成立した涌井の金銭トレード、そして、FA移籍に伴う人的補償の人選で「二軍スタッフ」の眼力が問われた。
「楽天が中継ぎの酒居知史を、千葉ロッテは伸び悩んでいた小野郁を選びました。酒居は一軍戦力ですが、小野は将来性を買われて2位の上位指名を受けたものの、プロ入りして5年、一軍登板は39試合しかありません」(前出・同)
酒居、小野の両投手は、楽天からFA宣言し、千葉ロッテに移籍した美馬学(33)と、同じくFAで楽天に移籍した鈴木大地(30)の人的補償として選ばれた。
「環境を変えてやれば」の言葉はよく使われるが、この点に関しては、奇しくも楽天、千葉ロッテ間で金銭トレードが成立した涌井秀章投手(33)のことがあてはまる。
涌井は2019年、勝ち星に恵まれず、二軍落ちも経験している。その再調整をしている様子は、他球団の二軍首脳陣の目にも映っていた。
涌井が二軍落ちしていた夏場を知る在京球団スタッフがこう言う。
「涌井の推定年俸は2億円。ロッテ内でも突出した高給取りです。彼はモチベーションに左右されるタイプなんです。『オマエに任せた』という状況になれば、意気に感じて投げるし、モヤモヤとした環境になると、ピッチングにも覇気がなくなるタイプ」
二軍落ちした時点で、涌井はヤル気を失っていたわけだ。高額年俸はネックだが、涌井クラスのピッチャーが獲得可能となれば、どの球団も調査するはず。もう一度、一軍にマウンドに戻ったとき、その期待に応えられるだけの体力が残っているのかどうか、技術面での衰えがないのか否か、意見を求められるのは二軍監督と二軍のスタッフたちである。
阿部二軍監督も、意見を求められるときが来る。他球団の二軍調整中の選手たちを見る眼も養わなければならないのだ。
涌井の再生が可能と見た楽天二軍首脳陣について、こんな情報も聞かれた。
「2020年の楽天は順調に行けば、岸、則本が開幕からローテーション入りして来ます。2人が健在ならば、10勝できるピッチャーを加えるだけで優勝圏内に届きます。涌井に15勝以上勝ってもらわなくても」(球界関係者)
一軍の戦況を見ながら、意見を伝えなければならないようだ。今オフのFA補強で蚊帳の外に置かれた巨人にとって、阿部は重要なポジションを託されたことは間違いない。(スポーツライター・飯山満)