それは銭湯だ。これは筆者個人の意見である。
風呂上がりのビールほど身体に染みるものはない。しかもそれが銭湯などの大衆浴場ならばなおさら。旅行気分が酒をさらに美味いものにするのだ。しかし東南アジアにはお湯につかるという習慣があまりなく、ホテルもシャワールームオンリー。ナイトマーケットも激アツだし、ホアンキエム湖も綺麗だしハノイに関しては言うことないのだけれど、「火照った身体でグビっといきたいのう」というのが日本人の本音。
そんな我々の欲求を満たしてくれるナイトスポットが実はハノイにもあるのだ。
ホテルの集まる旧市街から北上すること約5km。入り口には日本語で「はの湯」と書かれた看板を掲げる銭湯がある。扉には富士山と桜が描かれ、奥には「ゆ」ののれん。造りは至ってシンプルだ。ベトナムとは思えないほど清潔感のある脱衣所の奥にこじんまりとした浴場。体を洗う蛇口3つに湯船が1つ。そしてサウナ。これだけあればもう何もいらない。
木製の腰掛は温かみがあり、上を見上げれば竹でできた天井。備え付けのシャンプーで汗を流し、お湯に浸かって手足を伸ばせば、もうここがベトナムであることを忘れてしまうだろう。
1泊2日の弾丸旅行の方にもビールは美味しく飲んで頂きたいし、長期旅行の旅人にもたまには日本にとことん溺れてもらいたい。お風呂上りはトゥクトゥクで風を切りながらバーベキュー通りへと向かう。いや、我慢できなければその場で缶ビールをプシュっと開けてしまうのもいいかもしれない。
國友俊介
【プロフィール】
國友俊介 (くにとも・しゅんすけ)
旅×格闘技、アジアを自転車で旅をしながら各地のジムを渡り歩いている。目標は世界遺産を見ることではなくあくまで強い男になること。日本では異性愛者でありながら新宿2丁目での勤務経験を持つ。他にも国内の様々なディープスポットに潜入している。ブログ http://onkunion.blog.fc2.com/