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【コンピューターゲームの20世紀第60回】ゲーム性をガラッと一変し新たなファンを獲得した『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』

 当連載第50回で紹介した『悪魔城ドラキュラ』。ファミコン屈指の難易度を誇る歯ごたえ十分のアクションで人気を博し、その後は任天堂ハードを中心に、続編や外伝的作品が次々に作られていった。1993年には家庭用としては初めて任天堂以外のハードとなるPCエンジン SUPER CD-ROM2版『悪魔城ドラキュラX 血の輪廻』が登場。CD-ROMという新媒体の特性を活かしたビジュアルシーンやグラフィック、さらに磨きがかかったアクションは、次世代のドラキュラシリーズの姿や方向性を十分に予感させるものであった。

 そして1997年、プレイステーションで発売されたのが今回紹介する『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』である。本作はPCエンジン版の4年後を描いた作品であり、オープニングシーンでは『血の輪廻』の主人公だったリヒター・ベルモンドがヴラド・ツェペシュ、すなわちドラキュラ伯爵と戦う場面から始まる。が、バンパイアハンター・リヒターが活躍するのはここまで。以降、本編がスタートすると、主人公はアルカードにバトンタッチ。なお、アルカードとは偽名であり、本名はアドリアン・ファーレンハイツ・ツェペシュ。つまり彼はドラキュラ伯爵の息子ということに他ならない。ちなみにアルカードは過去作『悪魔城伝説』にもプレイヤーキャラとして登場しているが、設定は微妙に異なり、今作では父・ドラキュラと人間の女性・リサとの間に生まれたハーフという設定だ。

 これまでドラキュラシリーズの主人公はゲーム設定的にも伝統的にも使用武器は一貫してムチだったが、本作ではベルモンド家が主役から外れたこともあって、この縛りから解放され、主に剣を使って敵をなぎ倒していく。それにともなってアクションの幅は大きくバリエーションを増し、片手武器であれば2本使いができるほか、片手に剣、もう片方には盾といった使い方もできるようになった。モーションは鈍くなるが、両手武器で重い一撃を加えることももちろん可能。このように、本作ではプレイヤーの好みに応じて戦い方を変えることができるのだ。

 最終的な目的は従来通りドラキュラ伯爵を倒すことだが、従来作と決定的に異なるのは、決まったルートでゲームを進める必要がないということだろう。本作にステージの概念はなく、城内を自由に探索できるため、プレイする人によって攻略ルートは様々。また、新たにレベル制が採用され、敵を倒すと経験値を得ることができる。難易度が異様に高かった過去作では常にストイックな戦いを強いられたものだが、本作は爽快感を重視した作りになっているため、これまでドラキュラシリーズを敬遠していた人でもクリアできる程度の難易度に落ち着いた。とはいえ、ボスはそれなりに強いので、レベルを上げずに先に進み過ぎると痛い目を見る場面も多いが、腕の差はレベルと武器が補ってくれる。

 また、アルカードは7体の個性的な「使い魔」を召喚する能力も持ちあわせており、彼らもアルカード同様に経験値を得ることでレベルアップしていく。使い魔によってその能力は異なり、体力を回復してくれたり、隠し部屋の存在を教えてくれたりといいこと尽くめだ。ただし、呼び出せるのは常に1体のみという制約があるため、状況によって使い分けなければならない。

 また、アルカード自身は自らの姿をコウモリ・狼・霧に変えることができ、これらに変身しないと進めないエリアも。基本的に探索ルートはプレイヤーに委ねられるが、完全に自由というわけではないので、手詰まりの場合は怪しい箇所で色々試してみるといい。

 このように、従来の枠組みが全て取り壊され、幾つもの画期的な試みがなされた本作。意欲作だけに詰めの甘い箇所も見られるものの、それを補っても余りある魅力に溢れているというのが概ねの評価であろう。探索率を完璧にするもよし、武器や防具・アイテム蒐集も楽しみのひとつだ。アイテムは城内の図書館主と売買できるが、敵から得るというのが本道。なお、一度倒した敵は怪物図鑑に掲載され、HPや弱点などの役立つデータをいつでも閲覧可能だ。また、一部例外もあるがドロップアイテムの種類も掲載される。ほとんどの敵に通常アイテムとレアアイテムが設定されているので、この怪物図鑑を完成させるのもまた楽しい。

 ちなみに一度ゲームをクリアし、かつ名前を「RICHTER」で始めると前作の主人公・リヒターでプレイ可能。後に発売されたセガサターン版では、こちらも前作で登場した(月下の夜想曲でも登場する)マリアを使用できる。このセガサターン版は、画面がやや荒い、マップを開くためにいちいちメニュー画面を開く必要がある(セレクトボタンがないため)、ロード時間が若干長い箇所がある等の欠点もあるのだが、エリアや音楽、新武器、新敵など数々の追加要素も。PS版よりもマイナーなためか、今では定価以上で取引されているプレミアソフトとなっているため、入手を考えている方はご注意を。

 好評を博した探索型のドラキュラシリーズはその後、主にGBAおよびDSで展開され、いずれも高い評価を得たものの、現在は諸事情により休止状態。その詳細についてはここでは書かないが、最も続編が待たれるゲームのひとつではないだろうか。(内田@ゲイム脳=隔週月曜日に掲載)

■DATA
発売日…1997年
メーカー…コナミ
ハード…プレイステーション
ジャンル…アクションRPG
(C) 1997 KONAMI ALL RIGHTS RESERVED.DEVELOPMENT BY KCET.

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