いよいよ勝負の秋を迎えた。桜花賞、オークスは無念の涙をのんだレッドディザイアが、雪辱を胸に出撃態勢を整えた。
陣営の気合は一週前追い切りからもヒシヒシと伝わった。9日の栗東坂路で、四位騎手を背に800メートルから50秒0→35秒9→23秒8→12秒4。もともとケイコ駆けするタイプとはいえ、テンからこれだけ飛ばして、ラスト2Fで24秒を切るというのはまさに極上の切れ味だ。文句なしの一番時計をマークした。
「朝一番の追い切りで馬場コンディションも良かったけど、それにしてもすごいタイムが出た。これならいい形でスタートを切れる」。久々にパートナーの背中を確かめた鞍上からも笑顔がこぼれた。
オークスの後は、北海道千歳・社台ファームで鋭気を養っていた。その後は8月6日に函館競馬場へ移動、同月13日、栗東に戻った。
「ひと夏越して体がひと回り大きくなったね。ただ、春の時点でもあれだけの高い能力を見せていた馬。無理に変わらなくてもいい」
四位は、敢えて春からの変化を求めなかった。むしろ順調に来た事が何より。無事に秋を迎えられさえすれば、結果は必ず出せる。そんな思いが感じられる。
しかしディザイアは、そんな人の思いを超越する成長を見せたという。生まれ変わったといっても大げさではない。馬体はオークス時の484キロからパワーアップ。一週前の計量で500キロを越えている。マンハッタンカフェ産駒らしく、春はやや細手に映るシルエットだったが、ひと夏を越えて牡馬並みのたくましさが出てきた。
フィジカル面の成長は調教内容にも大きな変化をもたらした。守りから攻めへ。春はテンションを上げないようセーブ気味だったが、馬体減りの心配がなくなった今はびしびし攻められる。それが一週前の猛時計にも表れた。
「あの時計も含めてここまで何も言うことがない。今の状態でもう一度あの馬とやれば必ずいいレースができる」
松永幹調教師の言う“あの馬”とは無論ブエナビスタだ。その言葉を裏付けるためにも、本番を前に女王以外に負けるわけにはいかない。最高の形でリベンジの舞台へ、レッドディザイアの逆襲が始まろうとしている。