運命の分かれ道となった11日(木)の午後2時、栗東トレセン事務所で阪神JFの除外馬が発表された。かたずをのんで見守った結果は、鉄板の本命馬ブエナビスタが見事、出走権をかけた1勝馬による17分の6という狭き門の抽選をクリアした。「勝つような馬なら入るさ」と泰然自若に構えていた松田博調教師も、第一関門を突破したことで、まずは安どの表情を漂わせた。
戦績は2戦1勝、3着1回。しかし、敗れた新馬は当世代で最もハイレベルとされる10月26日の京都芝1800メートル戦だった。そのとき、先着を許したのは、来年のダービー馬はこの馬で決まり!と、もっぱら評判のリーチザクラウン(2着)、そして、友道調教師が「間違いなくクラシック有力馬」と断言するアンライバルド(1着)だった。その牡馬2頭をメンバー最速の上がり3F33秒5で猛追した鋭い決め手は、牝馬同士なら断然といえる。
それが証拠に、2戦目の未勝利戦では、テンから終いまでまったくの馬なり。直線入り口では“そこのけ、そこのけ、お馬が通る”かのごとく、コスモクリスタルを弾き飛ばしてゴール板に突き刺さった。
「正直、あの馬には一目置かざるを得ない」とは、阪神JFに管理馬を出走させる某調教師。他人の不幸は甘い蜜!? はたまた鬼の居ぬ間に2歳女王の座をゲットしようともくろんでいた他陣営にとっては、何とも厄介な馬が抽選を通ってしまったことであろう。
「ケイコでは少し最後に気を抜くような面を見せたけど、あれ以上速い時計(ラスト1F11秒7)になってもな。もう、そんなに追う必要はない。体はキャシャに映るが、それでもデビュー前より後肢に幅が出てきた。状態は使う前と全然違うで。カイバもしっかり食べているし、何の不安もない」
ベガ、アドマイヤジャパン、オーラなど、数々の名馬を育てあげてきた敏腕トレーナーは、いつもながら豪放らい落にこう言い放った。
「競馬に絶対はない」ことは競馬歴30年の記者は百も承知だが、それでも、このブエナビスタの単には有り金すべてをぶち込む覚悟だ。