『G1クライマックス28』
▽8日 横浜文化体育館 観衆 4,952人(札止め)
新日本プロレス真夏の最強決定戦『G1クライマックス28』Bブロックの公式戦が8日、横浜文化体育館で行われた。
試合前に決勝進出の可能性があったのは、IWGPヘビー級王者のケニー・オメガ、前年度優勝者の内藤哲也と、飯伏幸太、SANADA、ザック・セイバーJr.の5選手だった。
この日はまず、IWGP USヘビー級王者のジュース・ロビンソンが、4日のエディオンアリーナ大阪大会でケニーを破り、初黒星をつけた石井智宏と対戦。この1年で急成長を遂げたジュースに手を焼いた石井だったが、ひと通りジュースの技を受け切ると、垂直落下式ブレーンバスターを決めて完勝した。
左手を骨折し、ギブスをつけながらリーグ戦に強行参戦しているジュースだが、ここまでわずか2勝止まり。石井は、IWGPヘビー級王者のケニー、NEVER無差別級王者の後藤洋央紀、そしてIWGP USヘビー級王者のジュースと、新日本が管轄する三大シングル王者から勝利を収め、今後につなげた。
ザックは後藤と対戦。パワー殺法でザックを追い込んだ後藤はGTRを仕掛けるが、ザックがヨーロピアンクラッチで切り返して3カウントを奪取。この時点でザックは決勝進出の可能性を残した。ザックはクリス・ジェリコのIWGPインターコンチネンタル王座と、後藤のNEVER無差別級王座への挑戦をアピールした。
飯伏はタマ・トンガと対戦したが、バッドラック・ファレとタンガ・ロアのバレットクラブOBが予想通り試合に介入した。会場からはブーイングの嵐が沸き起こった。レフェリーが場外に落ちている間に、飯伏はシットダウン式パワーボムを仕掛けるが、ファレが阻止。そして飯伏にショートレンジのラリアットを放ったところで、試合を次に控えるケニーが走ってリングインした。
ケニーはファレをVトリガーで追放したが、ロアがスピアーをケニーに決めてケニーはダウン。蘇生した飯伏はロアをハイキックで場外に蹴散らすと、タマのガンスタン狙いを巧みにかわして、右ヒザのサポーターを外し、カミゴェを繰り出した。しかし、タマに寸前でかわされてしまう。タマは飯伏を持ち上げるとガンスタンが決まり3カウント。飯伏が想定外の3敗目を喫してしまった。
試合後、飯伏が退場するとバレットクラブOB勢はケニーを攻撃。ハングマン・ペイジとチェーズ・オーエンズが救出に駆けつけたが、ケニーは大の字になった。場内は騒然となった。
怒号が飛び交う中、次の試合が始まるとアナウンスされ、事情が分からない対戦相手の矢野通が登場。ケニーがグロッキー状態であることに気づいた矢野は、ゴングが鳴ると即座に片エビ固めでケニーを押さえ込んだ。だが、ケニーは何とかカウント2で返した。
矢野の頭を使った数々の反則行為に苦戦していたケニー。ペイジ&オーエンズが助けに入り、切り抜けていった。しかし矢野は海野レフェリーにしがみついて抵抗し、ケニーと衝突させ、背後からまとめて急所を殴打すると、無防備になったケニーの背後から“日大魂”の悪質タックルを炸裂させた。しかし、ここでタマ、ファレ、タンガのバレットクラブOB勢が乱入。タマが矢野とケニーにガンスタンを放ち、タマが強引に矢野をケニーの上に重ねると、レッドシューズ海野レフェリーが3カウントを入れケニーは2敗目を喫した。
メインでは2敗の内藤哲也が、3敗のSANADAと対戦。ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの同門対決となった。全日本プロレス時代から内藤戦を熱望していたSANADAにとっては念願のシングル対決だった。
SANADAは、クールな表情とは裏腹に内藤を追いつめていく。そんなSANADAに対して場内からはSANADAコールが発生。この試合に全てをぶつけようとするSANADAの姿勢が、見ているファンにも伝わるような熱い試合になった。しかし、ケニーが破れたことで、決勝進出が現実味を帯びてきた内藤は、投げっぱなしジャーマンを決めた。SANADAはすぐに起き上がり、内藤の首を捕えて、首を軸に後方回転。だが、着地したタイミングで内藤がデスティーノを決めて内藤が逆転勝利を収めた。
2敗をキープした内藤はマイクパフォーマンスで欠場中の高橋ヒロムにエールを送ると、SANADAと拳を付き合わせ、EVIL、BUSHIがこれに加わり感動のエンディングを迎えた。
この日の結果、ケニーと内藤が6勝2敗で並び、飯伏とザックが5勝3敗で並んだが、ザックはケニーと飯伏に直接対決で敗れているため決勝進出の可能性は消滅した。
8.11日本武道館大会で、ケニーが飯伏に勝てば自力で決勝に進出できる。直接対決でケニーと飯伏に敗れている内藤は、ザックに勝利した上で、ケニーが飯伏に敗れれば決勝進出。飯伏はケニーに勝利し、内藤がザックに敗れた場合のみ決勝に進出する。またケニー対飯伏が引き分けに終わった場合は、内藤がザックに勝てば内藤が決勝進出となる。
Bブロックはケニーか内藤が有力だろう。ただ、飯伏にミラクルな風が吹くのか注目されるところだ。ケニーはインタビューブースで「俺はイブシと本気で対戦することを強要されることになった」と飯伏戦への意気込みを語った。内藤は「自力で何とかなる話ではないけど、おそらく皆さまも望んでるでしょう。今年の夏も、最高のクライマックスを、俺が皆さまにお届けしますよ。楽しみに、待っててください」と連覇を誓った。激闘続きのBブロック公式戦もあと1試合。果たして“激闘王”は誰になるのだろうか?
文・取材・写真 / どら増田、萩原孝弘