私は福井県におりまして、田舎ですから母方も父方も親戚が多く、また地域の「横の繋がり」も結構広い方です。
いつだったか、私の祖母がある人のお葬式に行った時のことです。炊き出しなどの手伝いもしていたため、通夜・葬式の日はかなり遅くまで、そちらの家にいました。そこで耳にした事なのだそうです。
「Aさんが言うとったんやけど、(亡くなられた)Bさんが亡くなられる前日に、Aさんがこんな夢見たって。○○(地名)の田んぼ道におってやな、道の向こうから子供のBさんが駆けてくるんやって。あれーぇ、なんで、Bさん子供なんやろ、と思ってたんやけど、よう見たら自分も子供の頃と変わらん背格好でや。そうこうするとBさんがAさんとこに走ってきたし、Aさんも『まあええか、一緒に遊ぼ』って思って、Bさんに声かけたんやって。『Bちゃん遊ぼ、お宮さん行こう』言うて。そしたらBさん首振って、『悪いけど今日は遊べんねん、これから行くとこあるさけ。でも会えてよかったわぁ、Aちゃんにあいさつしたかったし』って言うて。結局、BさんはAさんに手を振りながら、そのまま走って行ってもたんやと。AさんはBさん見送った所で目が覚めたんやって。その夢からさめて暫くしてからなんや、AさんがBさん亡くなった言う電話聞いたの」
通夜の席でこんな話が披露されて、一同驚きを隠せなかったというのです。一般のご老人ですから、嘘などつかないでしょうし、素朴な話し方だけに妙なリアリティがあったそうです。
「Aさんが、通夜の席でそう言えば、こんな事があった」
と話してくれた不思議な夢の話だったのです。ちなみに寝覚めは全く悪くなく、むしろすっきりしていたそうです。祖母はその後に続けて、
「AさんとBさんは、子供の頃から仲良かったしなぁ、Bさんも嬉しかったやろな、最期にAさんと会えて」
と言いました。なんともいえない話ですね。
いわゆる『夢枕に立つ』ということなのでしょうか、私の周辺では、このような経験を話してくれる年輩の方は結構います。
「誰それさんが夢に出たー」
という話をよく聞くのです。
やっぱり、亡くなられる方が、後に残される人に、最期のお別れを言いに来るのでしょうか。うちの祖母は、Aさんが漏らしたこの言葉が、忘れられないと言います。
「Bちゃん、もう往ぬ時楽しそうに笑とったからなぁ、きっと天国行って遊んどるんやろな。子供やったしな」