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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 民進党はなぜ期待されない

 民主党と維新の党が合流して、民進党が旗揚げした。ところが、どの世論調査を見ても、「民進党に期待する」とした国民は20%台で発足早々から民進党は国民にそっぽを向かれている。
 それは当然だと思う。代表は岡田克也氏、幹事長は枝野幸男氏、国対委員長は安住淳氏、選対委員長は玄葉光一郎氏が就任している。民主党を政権から転落させた戦犯たちが、いまだに主要ポストに居座っているのだ。それでも、民進党が政策面で安倍政権と異なるものを打ち出せるのであれば、まだ期待もできるのだが、安全保障関連法案に反対すること以外、安倍政権との対立軸を見せられていない。
 特に、経済政策がはっきりしない。例えば、国民生活に一番大きな影響を与える消費税に関して、岡田代表は3月29日のテレビ番組で、「上げる、上げないを私は今、言うつもりはない」と語り、態度を曖昧にしたままなのだ。

 一方で安倍総理は、消費税引き上げ凍結に向けた布石を着々と打っている。安倍総理が開催した国際金融経済分析会合で、ポール・クルーグマンとスティグリッツという2人のノーベル経済学賞受賞者が、消費税引き上げの延期を提言した。もちろん、彼らを招けば、そう主張することは最初から分かっていた。だから、安倍総理は、消費税引き上げ凍結のお墨付きを求めた。また、安倍総理は、「東日本大震災やリーマンショック並みの経済危機が起きない限り、予定通り消費税を引き上げる」と言い続けているが、実はこの条件も、すでにほぼ満たされているのだ。
 日本経済が2年連続のマイナス成長に陥ったのは、リーマンショックのときだけだ。ところが、'14年度はすでにマイナス成長が確定しており、'15年度もマイナスになる可能性が高まっている。つまり、リーマンショック並みの2年連続マイナス成長に陥ったのだから、消費税増税を凍結しますと、安倍総理がいつでも言える経済状態なのだ。安倍総理が消費税増税を凍結宣言すれば、7月の参議院選挙は、自民党が圧勝した'14年12月の衆議院選挙と同様の事が起こってしまう。

 それを防ぐために、民進党が打ち出すべき最大の対立軸は、消費税率の5%への引き下げだろう。もちろん、財源が確保できるのかという批判は、すぐに出てくる。しかし、財源確保は十分可能なのだ。
 消費税率を5%に戻すためには、7兆円の財源が必要になる。それをまかなう一つは、法人税増税だ。法人税の実効税率は、'16年度から20%台に引き下げられたが、これを安倍政権発足前の40%台に戻せば、税収が4兆円増える。もう一つは、国家公務員人件費の3割カットだ。いま国家公務員の処遇は、異常な状態にある。昨年冬の賞与では、東証一部上場企業の平均が73万円だったが、国家公務員の賞与は72万円なのだ。
 つまり、国家公務員は勝ち組企業並みの賞与を得ている。その他、退職金を含めて、国会公務員の人件費を民間の水準に合わせるだけで、人件費を1兆5000億円節約できる。さらに、それに連動させる形で天下り団体への補助金などをカットすれば、3兆円の予算を確保できる。
 民進党は、これくらいの決断をしなければ、参院選での勝ち目はないだろう。

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