菅官房長官、加藤勝信自民党総務会長らの名が急浮上しており、当の二階派内では「幹事長は参院選も自民党勝利に導き、交代させる理由がない。交代なら首相と刺し違えで倒閣だ」と物騒な声も渦巻いている。
なぜ、二階幹事長交代論が出るのか。
「理由は3つある。1つは80歳と高齢なこと。参院選では年齢を感じさせないタフさで全国を遊説していただいたが、さすがに次の選挙はどうかという懸念がある」(首相周辺関係者)
早ければ、11月にも再び総選挙という風評が流れる中、幹事長として陣頭指揮を執れるのかという健康面での不安材料だ。
「2つ目は麻生副総理や自民党都連との確執ですよ」(同)
二階氏は麻生副総理の地元・福岡県で全面戦争を仕掛けている。4月の知事選と2016年の衆院福岡6区補欠選だ。
「福岡県知事選では、小川洋知事を二階氏の一の子分である武田良太代議士と鳩山二郎代議士が支援、麻生氏が擁立した元官僚候補と激突した。結果は武田氏らが麻生包囲網を築き約130万票対約35万票で圧勝。衆院補選でも麻生氏は負けて2連敗。メンツを潰されただけでなく、政治生命の危機にまで晒された。大恥をかかされた麻生氏は目の上のタンコブである二階氏をどうしても排除したいのです」(地元県議会議員)
この麻生氏の執念が安倍首相の心をぐらつかせているのだ。というのも、10月の消費税値上げで麻生氏は何が何でも続投させなければならない。また、11月総選挙も視野に入れる安倍首相は若手幹事長で臨みたいのが本音だからだ。
加えて、二階氏は東京都知事選がらみで自民党都連との軋轢もある。
「安倍首相の出身派閥である細田派は自民党都連の中心勢力。前都連会長の下村博文元文科相は’17年の都議選で小池都知事から『都政をダメにしているのは自民党都連』と大キャンペーンを展開され、議席を半減以下の23議席にまで追いやられ恨み骨髄ですからね」(自民党都議)
前年に行われた都知事選でも、増田寛也元総務相を支援した自民党は小池氏に大敗している。その後、小池氏は“排除発言”などで勢いが一気に失速すると、再選に向け自民党に急接近。その変わり身の早さに自民党、特に都連の反発は強い。
「小池氏を支持しているのが、元保守党で同じ釜の飯を食った二階氏です。2人は何度も密会を重ねており、『次も小池氏でいい。小池氏に勝てる人はいない』とまで二階氏は断言しています。しかし、自民党都連では安倍側近の萩生田光一幹事長代行や下村氏らが小池再選に絶対阻止の構えを見せている。小池氏を引きずり下ろすには二階幹事長交代が至上命題。でないと、自民党は来年の都知事選で分裂選挙に陥るのは避けられない」(同)
3つ目は韓国との関係だ。
「二階氏は親韓の筆頭です。日韓関係が緊迫している最中の8月、韓国の議長特使として訪日した朴智元韓国国会議員らと極秘会談しているほど。二階氏は’15年には1400人の大訪韓団を率いたように毎年渡韓。昨年は派閥研修会を韓国で行った。安倍首相は政権の要である幹事長が対韓国に大甘対応では足元を見られるとして苦々しく思っている」(政治部記者)
二階氏は幹事長続投に意欲満々で、二階派幹部は交代論に猛反発している。
「安倍首相が前回の総裁選挙で石破氏に圧勝したのは、二階氏がいち早く安倍3選支持を打ち出したからだ。今回の参院選勝利も二階氏が全国のJAなどをこまめに回り、TPPで反発を強める農業団体を緩和させた効果が大きい。恩を仇で返すなら二階派は安倍内閣倒閣に打って出る」
倒閣の青写真はこうだ。
「10月の消費税値上げで安倍内閣は経済不安定に陥る。米中貿易摩擦、韓国との対立でも経済に大きな影響を及ぼす。日本経済が冷え込めば安倍内閣の支持率急落は必至。そこを一気に突いて石破派、竹下派の一部の反安倍派と連携し『安倍降ろし』『安倍包囲網』を作るのです。二階氏が見捨てれば、安倍内閣など1日も持たないことを見せつけてやる」(同)
二階派は旧民進党の鷲尾英一郎代議士(新潟2区)が入会したことで46人となり、岸田派と並ぶ党内第4派閥に躍り出た。鷲尾氏の派閥入りには選挙区が競合する細田派の細田健一氏(比例北陸信越ブロック)が猛反発しているうえ、特別会員の細野豪志氏の合流にも火種が燻っている。
自民党分裂を引き起こしかねない安倍政権の「二階外し」だが、二階氏自身のウイークポイントはある。お膝元の和歌山県だ。
「今春の和歌山県議選で8期務めた二階氏元秘書の現職が、共産候補に敗れるという大波乱が起きました。麻生氏同様、地元での弱体化が顕著なんです。近々、息子に後を譲るのではとも囁かれる中、安倍側近の世耕経産相が二階氏の選挙区で衆院鞍替えを狙っているという風評も飛び交っています」(自民党代議士)
2019年11月20日まで安倍首相が安泰なら、これまで首相在任期間が最長だった桂太郎を抜く。安倍首相は“番頭”の幹事長に誰を抜擢するのか大注目だ。