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【不朽の名作】劇場で新作のドラえもん映画比べるのも面白いかも? 「ドラえもん のび太の日本誕生」

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パッケージ画像です。

 現在全国の映画館で、『ドラえもん』の劇場版最新作、『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』が放映中だ。同作のファンなら知っていると思うが、声優陣の変更があった2005年以降、劇場作品も旧作品のリバイバル的な作品が多くなっている。今回の作品もそれにあたり、その元となったのが、1989年公開のドラえもん映画シリーズとしては10作目の『ドラえもん のび太の日本誕生』だ。

 作品の設定としては、のび太が家出を計画し、裏山や空き地に住もうとするが、土地所有者がいて追い出され、ちょうどパパが預かってきたハムスターにおびえているドラえもんに泣きつき、まだ誰の土地ではない7万年前の日本に行こうという話となる。そこに、ジャイアン、スネオ、しずかちゃんの3人もタイミングよく家出してくるという展開。このへんの設定はほとんどリバイバル版も変化ないだろう。

 ドラえもんの劇場版と言えば、アニメオタクではなくとも、語りたい名シーンが多いシリーズとして有名だが、同作はその中では、おそらくあまり話題にのぼらない方の作品だ。作品としての流れはしっかりしているが、地味な部分が多いのが影響しているのかもしれない。というのも、多くのドラえもん映画では、ラストで大規模な決戦シーンなどが用意されていることが多いのだが、この作品はその部分が欠けている。意外とあっさり終わってしまうのだ。その代わり、この作品で注目なのが、恐怖を感じる不気味な仕掛けの数々だ。

 まず作品で目立つのが、子供にトラウマを与えそうな、恐怖を煽る演出だ。「時空乱流」という時空の嵐で、今回のゲストキャラとなるヒカリ族のククルが、7万年前の中国大陸から現在の日本に飛ばされてくるのだが、その際にドラえもんが時空乱流を解説するシーンで、神かくしなどの超常現象を持ち出す。この時の暗い神社の背景などが、なんとも不気味だ。さらに、1937年12月に、中国の長江で兵隊3000人が突然消えたなどの具体的なエピソードも持ち出すので、より不安を感じる。ちなみに、このエピソードは、実際に戦場伝説であるようで、ネットなどにも詳細を記載したページがあった。

 他にも、今回の敵役となる、クラヤミ族のまじない師ギガゾンビの紹介シーンで、「ギーガー! ギーガー! ギーガー!」とギガゾンビが三連発で絶叫するシーンなども、大人になって見ればギャグシーンにも映ってしまうのだが、子供にとってはかなり恐怖を煽るシーンだろう。このへんはリバイバル版とどう変わっているか注目かもしれない。また、この作品ほど顕著ではないが、芝山努監督時代、つまり1983年から2004年までの劇場作品には、ところどころで、ちょっと怖いシーンというのが盛り込まれているのが特徴だ。

 敵キャラも、シリーズ中ではかなり恐怖を煽る存在となっている。まず、敵の親玉であるギガゾンビには、とある理由で毎回頼りになるドラえもんのひみつ道具が通じない。この影響で、ラストは決戦にならず、第三者に解決を任せる訳だが、これは子供にとってはかなり恐怖だろう。一緒に観るであろう大人も「どうなるんだ?」と注目するはず。さらに、ギガゾンビの部下である、ツチダマもかなり強烈。見た目は土偶なのだが、人語を話し、破壊されても、とある仕掛けで再生する能力を持っている。加えて劇中では、ヒカリ族を捕らえて連行する際、「手向かう者、歯向かう者。“殺して”先を急げ」と明確に殺人の意思を出す数少ないキャラで、ある意味ギガゾンビよりも存在感を放っている。それこそ、子供の時にこの映画を観れば、土偶の写真などを見る度にツチダマを思い出すほどに。このへんの怖さも、リバイバル版との違いを確認すると面白いかもしれない。

 あと、この作品ではのび太が遭難するのだが、そのへんの仕掛けも注目だ。「リニアモーターカーごっこ」という、時速300キロも出る電車ごっこ道具を使って、クラヤミ族のアジトを目指す最中に遭難するのだが、猛速の電車ごっこ絵面から、洞窟でのび太がいないことを他メンバーが確認する流れが、コントのようになっている。その後の遭難しているのび太との演出ギャップがかなり印象的だ。途中で気づいてやれよ誰か…。他にも、7万年後の日本から帰ってきた時差ボケで居眠りするのび太、ジャイアン、スネオの3人のシーンの後に、持ち帰ったツチダマの指をドラえもんが難しい顔をして調べているシーンなど、笑いの後に、怖さを煽るシーンが用意されていることが多い。笑いと恐怖がメリハリよく配分されており、特定のシーンを印象深くする仕掛けとして良く機能している。

 恐怖演出ばかりに触れたが、この作品は序盤のワクワク感もなかなかかと。広大な大地を開発するため、ドラえもんからそれぞれのキャラが個性にあった大臣に、任命されて作業する場面などは、かなり楽しそうだ。まあ、若干ドラえもんの道具に頼りすぎな部分もあるが…。

 ここでのび太はペット大臣に任命される。この時「クローニングエッグ」で普通の動物を作らず、アンプルをかけ合わせて、ペガサス、グリフォン、ドラゴンを作ってしまうあたりがのび太の特定の分野での非凡さを感じさせる。実はのび太は、しずかちゃんと結婚した世界線では、動物の保護活動などに従事しているのだが、その辺の設定を知っていると思わずニヤリとすることだろう。

 他に注目する部分としては、シリーズ中でも一二を争うほどのび太の活躍が重要となっている部分だろうか。毎回劇場シリーズでは扱いの良いのび太だが、ラスト付近の登場シーンは、シリーズ随一の、のび太の名場面と言っていいだろう。のび太ファンにはかなりオススメの作品だ。

 それはそうと、ところでタイムパトロールさん、ドラえもんの所業は時間犯罪ではないのですか?

(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)

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