エリザベス女王杯はやはり何かが起きる。一昨年のカワカミプリンセスの降着劇に続き、今年は武豊騎乗の3番人気ポルトフィーノがスタート直後に落馬するアクシデント。場内のどよめきが起こるなか、女王の座を射止めたのはリトルアマポーラだった。
道中はコスモプラチナがつくる淀みのないペースの5番手。牝馬3冠がいずれも後方(ふたケタポジション)からの競馬だったことを思えばかなりの積極策だ。レース後、鞍上のルメール騎手が作戦を明かした。
「DVDで見たレースはほとんどが後ろからだったので、『今回は好位で競馬をしたい』と先生に伝えた。そうしたら、『君の乗りたいように乗ってくれ』と言ってくれたんだ」
直線に入っても他馬より早めのスパート。直後にいた1番人気カワカミプリンセスに1馬身1/2という決定的な差をつけ新女王に輝いた。普段は口が重い長浜調教師も鞍上をほめ称える。
「脚質だけ伝えて、判断は彼に一任した。“完ぺき”のひと言。ゲートをすんなり出て、無理せず好位。私が思っていた通りの理想的な競馬をしてくれた」
ルメールと社台の勝負服で思い起こされるのが2005年の有馬記念。それまで追い込み一辺倒だったシルバーコレクター・ハーツクライを今回と同じ積極策で見事、グランプリホースに導いた。さらにいえば、あのディープインパクトに初めて土をつけたのが彼の大胆騎乗だった。
「ハーツクライ以来の(日本での)GI制覇だって? あの時と同じようにいいポジションを取れた。ストライドが大きく、心臓が強い。何より、いいハートを持っている。ハッピーだよ」
次走は未定だが、「あえて牡馬と競馬をやらせる必要はないかな。大事に育てて行きたい」と長浜師。“牝馬の時代”にまた一頭、強力な馬が加わった。