出火原因は現時点では不明だが、現在ノートルダム大聖堂は改修作業中。火元は屋根裏だったこともあり作業の際の失火ではないかとみられている。幸いにして、改修作業のため美術品が持ち出され、貴重な芸術品や聖遺物も現場から素早く運び出され無傷であったという。
ノートルダム大聖堂を飾る彫刻の中で、有名なものの一つにガーゴイルというものがある。テラスや屋根に設置された恐ろしげな怪物の像で、頭に角が生え、背中に翼を生やしているものが多い。何らかの怪物をかたどったものと思われがちだが、実は雨樋(あまどい)だ。
13世紀、ゴシック建築で建てられた大聖堂は構造上、屋根から流れ落ちる水が壁面を濡らして漆喰(しっくい)を侵食してしまう。そこで、外壁から離れた場所に水を落とす吐水口が必要だった。怪物のデザインを施した結果、現在ガーゴイルと呼ばれる彫刻になったのだという。「ガーゴイル」という名前も、うがいなどでなどを鳴らす音からついた名前である。
なお、現在のノートルダム大聖堂を飾るガーゴイルの多くは19世紀の修復の際に加えられたものだという。外壁を飾っていた彫刻の大半はフランス革命時に破壊されてしまったそうだ。
そんなノートルダム大聖堂を飾っていたガーゴイルたちは、修復作業のために大聖堂から取り外されていた。ガーゴイルは雨樋としての用途があるため、一種の火災よけの意味があるという解釈も存在する。火災が発生したのはガーゴイルが移動された4日後に発生しているため、火災と何らかの関係があるとみる人もいるようだ。
なお、フランスのマクロン大統領は5年以内に大聖堂を再建すると宣言したが、数十年はかかるのではないかとする見方もある。
いずれにせよ、フランス・パリを代表する歴史的建築物なだけに、再建を願ってやまないものである。
(山口敏太郎)