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申告敬遠にイチローが憤慨 さらなる新ルール導入論で野球が面白くなくなる?

 イチロー(43=マイアミ・マーリンズ)は饒舌な選手ではない。マスコミに対し、リップサービスはしてくれない。独特な言い回しもあり、どちらかといえば“記者泣かせ”な選手だ。しかし、そんなイチローがストレートな物言いをしたとき、強いインパクトを残す。9月18日のニューヨーク・メッツ戦後、イチローは『新ルール』に噛み付いた。

 「面白くない、ダメだね!」

 同日の3回裏、二死二塁の場面でイチローが打席を向かうと、メッツのテリー・コリンズ監督が球審にシグナルを送った。今シーズンから採用された「敬遠の申告制」である。守備側の監督が意思表示すれば、ピッチャーは1球も投げずにバッターがそのまま一塁へ歩かなければならない。

 イチローが一塁に向かう際、球場からブーイングが起こった。勝負を避けたメッツ陣営に対してではなく、機械的な場面変更にシラケてしまったからだという。

 この『新ルール』を実体験したイチローは、記者団の質問を途中で遮って、さらにこうまくし立てたそうだ。

 「敬遠球を打つとか、暴投が? それだけじゃない。空気感があるでしょ、その4球の間の。面白くないですよね」

 敬遠の申告制が採用された理由は、試合時間の短縮。だが、敬遠球を打ち返すハプニングも野球の面白さである。それは、日本球界でも起きている。1999年6月、新庄剛志(阪神)が敬遠球をサヨナラ打に変えたドラマは、今も語り草になっている。新ルール導入が発表された今年3月時点で、「野球のドラマ性が失われる」との批判も聞かれたが、大リーグ機構(MLB)と同選手会は「敬遠が起きる割合は、2・6試合に1回。影響はない」と説明していた。

 メジャーリーグが採用すると、翌年、日本球界もそれを導入――。昨季、12球団を混乱させたコリジョンルールがそうだった。日本に「敬遠の申告制」が導入されるのを危惧する声は尽きないが、イチローを始めとする日本人メジャーリーガーたちは、もっと“奇妙な体験”をすることになりそうだ。

 「来シーズンはもっと大きなルール変更がされそうです。MLBのコミッショナー、ロブ・マンフレッド氏は改正された労使協定を根拠とし、『たとえ選手会の賛成が得られない場合でも、自分の権限でルール変更できる旨』を主張していますので」(米国人ライター)

 米メディアは新たな『ルール変更』を予想する特集も組んでいた。「マイナーリーグで試験的に導入し、その反応を確かめてからになるだろう」と前置きしていたが、一例が「投球間の秒数計測(20秒以内)を徹底させるか、短縮させ、同時にサイン交換で投手がプレートを外すのを辞めさせる」「試合中、首脳陣がマウンドを訪れる回数の制限」「ストライクゾーンの拡大」など。もっとも可能性が高いとしているのが、『タイブレーク制の導入』だった。「延長戦に突入したら、いきなり二塁に走者を置いた場面から攻撃が始まる」と予想されていた。

 「MLBがルール変更を急ぐ理由は試合時間の短縮のためですが、なぜ、試合時間を短縮させたいかといえば、テレビ中継の影響です」(米国人ライター)

 野球の国際試合や日本の社会人野球、秋の明治神宮大会などでは、すでにタイブレーク制が行われている。こちらがタイブレーク制を採用していく理由は、大会期間内に予定試合数を全て消化させるため。時間短縮とはちょっと意味合いが違うが、奇しくも、日本高野連は来春のセンバツ大会から“タイブレーク制の新ルール採用”を決定させた。イチローが申告制の敬遠を受けたのが日本時間の19日。同日、高野連はその決議を取る理事会を開いたのだ。高校野球関係者によれば、「来年夏の甲子園大会でも採用される方向」とのことだ。今後、「好投手同士の投げ合い」といったドラマは見られなくなるだろう。

 「延長戦がタイブレーク制となれば、投手の精神的疲労度はさらに高まります。後攻チームの攻撃場面では、1点を失えばその時点でサヨナラ負け。投手は牽制球を多めに投げ、かつ内野手もスクイズに備えるため、サインを交換する時間が長くなってしまう」(プロ野球解説者)

 急速な変化は好ましくない。野球の面白みを奪った新ルールに対するイチローの怒りが、日本の野球関係者に届けばいいのだが…。

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