日本勢でトップに立ったのはトヨタ自動車(423億9200万ドル。1ドル=108円換算で約4兆5783億円=以下同じ)で、前年の10位から8位にランクアップした。独メルセデス・ベンツを押さえて自動車業界ではトップブランドを誇るが、昨年に続いて韓国サムスン電子の後塵を拝している。ホンダは昨年と同じ20位だが、F1復帰が評価され、ブランド価値は17%アップして216億7300万ドル(約2兆3406億円)だった。
世界のトップ20は別表(本誌参照)の通りだが、その下の順位を探っても今や“時代の寵児”となった3人衆が率いる会社名はない。
米誌『フォーブス』の2014年版世界長者番付によると、孫正義ソフトバンク社長が世界42位で日本の経営者第1位。次いで日本の2位が世界45位の柳井正ファーストリテイリング会長兼社長。3位が楽天の三木谷浩史社長で、こちらは世界132位にランクされる。何かと派手な話題を振りまくこの長者3人衆が率いる会社は、そろいもそろってブランド世界ランクでは対象外なのだ。
この世界ランキング100に名を連ねる日本企業を順に見ていこう。キヤノンは昨年から順位を二つ落として37位になったが、ブランド価値は6%増加して117億200万ドル(約1兆2638億円)だった。また大幅な赤字垂れ流しで“負け組”をアピールし、平井一夫社長の解任観測がくすぶるソニーは昨年の46位から“小幅下げ”の52位にとどまっている。
日産自動車は昨年の65位から56位に順位を押し上げ、ブランド価値は23%増の76億2300万ドル(約82億3200万円)に高まった。パナソニックは前年の68位から64位に四つランクアップし、ブランド価値は8%増の63億300万ドル(約68億700万円)だった。
パナソニックはこれがよほどうれしかったのか、ホームページでインターブランド社の評価コメントを発表している。要約すると「一部の不採算部門を整理する一方で自動車関連と住宅部門で積極投資を行ったこと」および「オリンピック公式スポンサーの継続」がブランド価値を向上させた大きな理由である。
日本企業の7社目として世界100位に辛うじて滑り込んだのが任天堂だ。ブランド価値は41億300万ドル(約44億3100万円)で、昨年の67位から大きくランクダウンした。
同社はソニーと同様、今や“負け組”の烙印を押されており、頑として経営責任を取ろうとしない岩田聡社長への風当たりが強まっている。
その任天堂やソニーとは対照的に“長者御三家”が率いるソフトバンクなどがお呼びでないのはなぜなのか−−。
インターブランドの日本法人であるインターブランドジャパンの広報担当者の答えは明快だ。曰く「対象企業は財務諸表が公表されて海外売上高比率が30%以上。海外で事業を展開している場合でも、現地企業を買収して日本の企業名に改めなければカウントされない。ソフトバンクの米携帯電話会社の買収はこれに該当する。楽天はまだ海外比率が低いが、ファストリ=ユニクロはもう少しで比率30%に達する。そうなれば一気に浮上するだろう」というのだ。
ならば市場退場の“レッドカード”が目前にチラついてきたソニーと任天堂が世界的に高く評価され続ける理由は何か。
「評価は本業の実力はもちろん、その業界と企業のブランド力分析で決まる。両社の場合、業界内でのブランド価値が判断されるため結果としてブランド力は高く評価される。企業ブランドについては将来を見据えた世界観を含め、その確かさを独自基準の10項目で測ることになっています」(広報担当者)
つけ加えればインターブランドは1974年にロンドンで設立し、ニューヨークを含め世界27カ国にオフィスを構える世界最大の調査・コンサル会社だ。大手証券マンが言う。
「市場では企業価値を時価総額(株価×発行株数)で判断する。インターブランドのランキングは消費者の購買動向に与える影響を金額で算出しており、消費者ニーズに敏感な業界、企業ほど評価に神経を尖らせています」
楽天やユニクロは英語の社内公用語化にかじを切った。しかし、今やそれだけでは世界に伍して戦えない時代になったようだ。