海外ニュースサイト『Daily Mail』は昨年、髄膜(ずいまく)炎菌性髄膜炎に感染し敗血症になり、足の指を7本切除する手術を行ったイギリスに住む53歳の女性、ルース・ケントさんが当時の心境について語った記事を今年8月16日に公開した。ルースさんの体に異変が現れたのは昨年11月のことで、当初はその症状からインフルエンザだと思ったそうだ。しかし、その2日後の11月3日には容態が急変。ルースさんの呼吸音がおかしく、顔色が真っ青なことに気付いた息子が救急車を呼び、病院に搬送された。
病院に搬送された際、ルースさんの意識はもうろうとしており、家族が病院に呼び出され「ルースさんは敗血症になっている。死亡する可能性もある」と告げられたという。ルースさんは敗血症によって、体の組織が壊死。手や足、顔の皮膚が黒く変色してしまい、看護師が絶えず、変色した皮膚をこすり落とす必要があった。足の指7本と足の側面、足の裏を切断する手術を行ったが、ルースさんの症状は重く、一時は鼻をそぎ落とすことまで検討されたようだ。ルースさんは奇跡的に一命を取り留め、2カ月後には退院したというが、2019年8月現在でも車いす生活を余儀なくされているという。
ルースさんは、現在もうまく曲がらない指があり、痛みと闘いながら厳しいリハビリに耐えている。当時を思い起こしながら「みなさんも体に異変が起きたらすぐに医師に連絡してほしい」と訴えたそうだ。
医師や薬剤師向けに医学情報を発信している『メディカルノート』によると、敗血症の原因は、感染症だという。原因となるのは、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫による感染症など多岐にわたる。敗血症を発症するとだるさが出て、体温が38度以上もしくは36度未満になり、嘔吐など風邪に似た症状が現れるというが、重篤化すると皮膚の色が変わるなどの症状が現れるようになる。なお、ルースさんの敗血症の原因となった髄膜炎菌は莢膜(きょうまく)という厚い膜に覆われた細菌で、ヒトの免疫機能では排除されにくく、体内で増殖しやすい特徴があるとされている。
このニュースに対し、ネット上では「もっと早く気づけていればよかったのに」「2日間でここまで進行してしまうのか」とルースさんに同情する声が上がったほか、「敗血症なんて他人事だとだと思っていたけど、自分もいつ感染するかわからないのは恐ろしい」「集団感染のニュースが昔あったな」と、敗血症の恐ろしさを口にする声も上がっていた。
敗血症は、校舎や学生寮など、人が密集して住んでいるところでは集団感染の危険性もあるようだ。
日本でも2011年に宮崎県の高校男子寮で集団感染が起こり、うち1名が死亡している。死亡したのは当時15歳の男子生徒で、野球部寮で生活していたという。既往歴として幼児期に髄膜炎に罹患していたほかは健康そのものだったとそうだ。2011年5月13日早朝、同生徒が寮の食堂でうずくまっているところを発見され、7時10分に1件目の病院に搬送されたが、症状は悪化。13時に別の病院へ緊急搬送されたが、14時過ぎには心停止を引き起こし、17時54分に死亡が確認された。また同県によると、症状が出た生徒はほかに3人おり、うち1人から髄膜炎菌を検出した。この3人は回復したという。
感染症である敗血症は、免疫力の低下している病人や高齢者や子供が罹患することが多いと言われている。「自分は大丈夫だ」と過信せず、注意したい。
記事内の引用について
Mother, 53, who thought she had the 'flu' loses SEVEN toes and has parts of her feet amputated after they turned black from sepsis(Daily Mail)より
https://www.dailymail.co.uk/health/article-7363331/Mother-53-loses-seven-toes-parts-feet-amputated-turned-black-sepsis.html
敗血症(メディカルノート)より
https://medicalnote.jp/diseases/%E6%95%97%E8%A1%80%E7%97%87
高校男子寮における髄膜炎菌感染症の集団発生時に経験した劇症型敗血症の1死亡例(国立感染症研究所)より
https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2258-related-articles/related-articles-406/4148-dj4065.html
髄膜炎の疑いの男子高生死亡 宮崎、ほか3人に症状 (日本経済新聞)より
https://www.nikkei.com/article/DGXNZO28702670X10C11A5CC0000/