お笑い業界は、春がピン芸人の“R-1ぐらんぷり”、秋はコントの“キングオブコント”、年末は漫才の“M-1”が3本柱で、優勝芸人は売れる片道切符を手に入れたも同然だ。ところが、優勝した数年後、アルバイト生活に転落する者も稀にいる。『キングオブコント2013』王者・かもめんたるがそうだ。
岩崎う大、槙尾ユウスケの2人は、優勝直後の1か月は多忙を極めた。1か月間で15回もテレビに出たのは、生涯初だった。そのバブルは同年末まで続いたが、翌14年から徐々に仕事が減少。現在はお笑いライブを除くと、月1〜2本程度にまで落ちこんでいる。
すでに、中古ながらも一軒家を購入しており、3児のパパである岩崎は、副業を開始した。出版社で月収5〜7万円、ライター業で月に5万円、所属事務所・サンミュージックの演技指導講師で月に2万円ほど稼いでいる。一家の主として、身を粉にして働かざるを得ないのだ。
悲しいのは、相方の槙尾もバイトなしで生活できなくなっていることだ。彼は、同じ事務所の先輩・ヒロシが経営するカラオケパブで、ランチタイムにウエイター。月に2〜3万円ほど潤っている。2人の芸人月収は4万円程度。バイトはもう、1年以上続けている。
『R-1ぐらんぷり2014』で満票優勝したやまもとまさみの場合は、なんと、アプリ系企業に就職してしまった。彼のコントは折り紙つきだが、役者経験が長いため、フリートークが苦手。そのため、本来ならバブルを謳歌できるはずの優勝直後も、全国ネットのテレビ出演は5本だけ。その後も露出は減る一方で、最近は週末、ビンゴ大会の司会業が入る程度だ。
2児のパパで“R-1”優勝時は、電気製品の実演販売、大工、美白美容液の販売と3つのバイトを掛け持ちしており、月収40〜50万円はあった。役者中心の現在は、アプリ会社で開発、提案をして、バナー広告の売れ高で収入が決まる雇用形態で働いている。その部署のリーダー。「“R-1”でチャンピオンになった」という功績が称えられての、役職だ。
振り返れば、“R-1”は悲運のコンテスト。歴代覇者でも浅越ゴエ、なだぎ武、中山功太、佐久間一行、三浦マイルドなどは、全国的知名度が低い。バイトしている者もいるほどだ。
今は、銀シャリがこの二の舞にならないことを願うばかりだ…。