「去年の補強が巧く行きすぎたというか…。その分、ペナントレースを失速したときの失望感も大きく、シーズンを通してファンもチームも前向きになることができませんでした」(プロ野球解説者)
しかし、秋季キャンプからチームに合流した高橋慶彦打撃コーチの評判が良い。
「熱心なんですよ。高橋コーチも現場復帰できて嬉しいんでしょう」(同)
秋季キャンプ時点での情報だが、同コーチが重視していたのは『腕の使い方』。選手が振ろうとするバットのヘッドを持っていったん止め、スイング軌道を丁寧に説明していた。椅子に座ってのティー打撃もやっていた。特別な練習法というわけではない。しかし、熱心に語りかけ、その練習の意味を説明してやれば、選手はコーチに付いていくものである。
また、オリックスのキャンプは春、秋ともに居残り練習は自己選択だった。やりたいと思う者、全体練習が足らなかったと思う若手が残ってバットを振る程度だった。しかし、高橋コーチは「秋季キャンプで求められるのは練習量」と言い切り、以後、ほぼ全員が残って300スイング以上のノルマをこなしていた。
2015年、オリックスのチーム打率は2割4分9厘(リーグ5位)、総本塁打94本(同4位)、総得点519(同5位)。ビッグネームを揃えた大型打線として物足りない数字である。高橋コーチは選手を発奮させることに成功した。監督、コーチに求められるのは技術を伝えることだけではない。選手に「練習しなければ」と思わせる環境作りも大切である。オリックスは前年の大型補強により、選手層の厚いチームでもある。中堅、若手のヤル気がそのまま春季キャンプに持ち込まれれば、主力もウカウカしていられなく、チームも活気づいていく…。
高橋コーチは千葉ロッテでヘッドコーチも務めたが、12年オフに退団。その後は住宅建築の会社に務めるなど、畑違いの仕事も経験している。その沈黙の帰還が選手に伝える言葉を広げ、野球への情熱をさらに強くしたのではないだろうか。
オリックス打線が復活すれば、ソフトバンクの独走はあり得ない。スポーツ新聞の一面を飾るような補強はなかったが、オリックス球団はコーチ人選で存在感を示している。