芝居がかったこの一言で、三原じゅん子自民党女性局長の入閣が決まったようだ。
ご存じのように、このセリフは参院選直前に安倍首相への問責決議案を提出した野党に対して発した脅し文句である。
自民党幹部が苦笑する。
「首相は今、完全に三原にベタ惚れですわ。あの元女優特有のオーラを出しながらの演説に大喜びしていたというからな」
その安倍首相のお気に入りぶりは、参院選の政見放送の対談相手に大抜擢されたことでも明白だ。
「安倍首相は政見放送の中でも、『この前の三原さんの参議院本会議での演説は、すごい迫力でしたね』と、嬉しそうに話しかけ、三原も『すさまじい反響でしたね』と応じていました」(政治部記者)
このお褒めの言葉に、三原氏はさらに安倍首相へのヨイショで返した。
「来日したトランプ大統領を大相撲に招待するなど、大統領と総理の蜜月ぶりを世界に存分に発信しておられましたね」
こうした政見放送で、対談相手に選ばれるのは、首相が相当気に入っている証拠。それだけに、自民がある程度勝てば、選挙後の内閣改造で入閣間違いなしとみられていたのだ。
再び自民党幹部。
「確かに彼女、人気があるのも事実。今回の参院選では、令和おじさん人気の菅官房長官、小泉進次郎厚生労働部会長ともども“応援弁士ビッグ3”の1人として引っ張りだこ。全国を飛び回って、そこそこ勝ったのだから、入閣は120%間違いない」
こうなると注目されるのは、そのポストだ。本人は、「東京オリンピックのテロ対策、受動喫煙問題は私の最大の関心事」と日頃から国会でも主張しているだけに、環境相や国家公安委員長、もしくは東京五輪・パラリンピック担当相あたりが意中と見られる。
「この中で、次期五輪相候補には強烈なライバルがいる。JOC副会長、しかもスケートと自転車選手として夏も冬も五輪に出場した橋本聖子参院議員だよ。五輪担当大臣として、内外ともに誰もが適任と思うはず」(前出・自民党幹部)
しかし、三原氏は首相のお気に入りというだけではない。2016年の参院選では神奈川選挙区から出馬して100万票を取り、ほかの候補者を寄せ付けずトップ当選したことで、国民からの指示も圧倒的。さらに、神奈川選挙区出馬ということでも分かるように、神奈川を地盤とする菅官房長官もお気に入りなのである。
「橋本氏は、森喜朗・東京五輪パラリンピック競技大会組織委員会会長の秘蔵っ子ですが、勢いがあるのは三原氏。現時点では三原氏のほうが有利と囁かれています」(前出・政治部記者)
三原氏といえば、『3年B組金八先生』での「顔はヤバイよ! ボディーやんな、ボディー」の名台詞で知られるが、水面下の女同士のポスト争いでも、橋本氏をボディーブローでじわじわと追い込んでいる印象だ。
「政治家は、意外とドMが多いんです。普段、ふんぞり返っている反動で、ピシャリと意見してくる女性にしびれるタイプばかり。三原は、それを理解した上で立ち振る舞っている。あんな元女優の三流演説で入閣が本当に決まったら、お笑い“SM内閣”ですよ」(夕刊誌記者)
三原氏以外の注目人物はどうか。内閣改造の度に名前が挙がる小泉進次郎厚生労働部会長について、自民党関係者はこう予測する。
「選挙で一度、中断した老後資金2000万円問題は再燃の可能性が高い。参院選直前の朝日新聞の世論調査でも『安倍政権の年金政策を評価するか』という問いに6割が不満と答えている。そのため野党が再び、年金問題で政権を攻撃してくるでしょう。その時、少しでも答弁イメージで国民の好感度を引き出すため、根本匠厚労相から国民人気抜群の進次郎氏に代える可能性が大きい」
ただ、別の自民党関係者は違った見方をしている。
「今回の参院選挙では、2016年同様、東北で反自民が依然強く2勝4敗だった。農業問題がおろそかにできないということだから、農林部会長経験のある進次郎氏を農水相に就ける可能性のほうが高いのではないか」
秋田県に設置が予定されているイージスアショアの問題が東北での敗因につながったとされるため、岩屋毅防衛相を交代させ、小野寺五典前防衛相の再々登板も検討されているという。
「こじれる韓国との問題も、改造内閣の重要ファクター。徴用工問題で在日韓国大使を外務省に呼びつけ、三原じゅん子ばりに『極めて無礼だ!』と抗議した河野太郎外相と、韓国向け半導体素材の輸出管理強化の旗振り役である世耕弘成経産相は“対韓強硬派”として続投間違いなし」(前出・夕刊紙記者)
問題は幹事長ポストだ。
「二階俊博幹事長は、改選議席数の過半数を自公で維持できたことで、責任を全うしたことになる。ただ、甘利明選対委員長もいるとはいえ、『次の総選挙の陣頭指揮は二階さんでは無理』というのが党内一致の意見。では誰が二階さんのクビに鈴をつけるのか。安倍さんしかいないだろう」(党長老)
二階氏の後任に、かねてから幹事長ポストに意欲を示してきた菅官房長官が就任すれば、小泉進次郎官房長官というプランも見えてくる。9月とされる内閣改造から目が離せない。