「私の彼氏は、とにかくパクチーが大好きな人でした。でも私はあの味が大嫌いで、少しも食べたいとは思いません。彼もそれをわかっていてくれるので、食事の際、私に無理に勧めてくることはありませんでした」
だが彼女にとって一番辛かったのは、恋人とのスキンシップの時だったという。
「よく彼とキスをする時、口元からパクチーの独特な味が舌から伝わってくることがありました。それが本当に嫌で、毎回ドン引きしていたんです。でも食べないでほしいなんて言えませんでしたね。彼は、パクチーが好きすぎて、お店に行くだけでなく、パクチーコミュニティみたいなものにも参加して、楽しそうに食べている様子をいつも、SNSにあげていたんです。そこまで楽しんでいることを、否定する勇気はありませんでした」
そしてパクチーが嫌いな華さんにとって、彼とのキス=気持ち悪くなる行為という意識が、脳に刻まれてしまった。そのため、本当の理由を隠して別れを切り出したという。
「彼が頻繁にパクチーさえ食べていなければ、今でも付き合って、結婚していた可能性は十分にあります。でもどうしてもあのキスの感覚だけが無理でした」
その後、彼女は、クセのある食べ物を好まない男性を恋人候補として探しているという。
取材/構成・篠田エレナ
写真・hpeguk