A:糖尿病の手術は、アメリカでは歴史があるようですが、日本では始まってまだ2年くらいのようです。
●副作用もある
この手術は、胃を10分の1程度に小さくして、小腸もかなり切除して短くするようです。開腹ではなく、腹腔鏡を使って行います。高度の肥満の人が対象です。胃の大半を切除すると、一度に食べられる量は極端に少なくなります。また、小腸が小さくなると、その分、栄養の吸収も抑えられます。
つまり、この手術は、摂取エネルギーと栄養を減らすのが目的だといえるでしょう。その結果、当然体重は減るし、血糖値は上がりにくくなるでしょう。
実際、この手術を受けると多くの場合、短期間で何十キロも減量でき、血糖値も正常値に下がり、薬も不要になるようです。糖尿病合併症の進行も抑えられます。
ところが、手術による副作用も報告されています。逆流性食道炎、脱毛、下痢、貧血、脱水などが起きます。中には、食べ物がまるで食べられなくなり、回復するのに苦労している人もいるようです。
●心理療法やダイエット点滴を利用する方法もある
手術によって臓器を切除するのは、決してよいことではありません。短期間では何も異常は起きなくても、小腸からの栄養吸収が抑えられることや、腸閉塞を起こしやすくなるなど、さまざまな合併症のリスクが伴います。QOL(生活の質)も下がります。
減量がどうしてもできない場合、私の個人的な見解では、いきなり手術ではなく、まずは催眠療法などの心理療法を行うのも選択肢と考えています。「痩せられない」という深層心理(潜在意識)の部分からアプローチすることで、まずは「痩せられるマインド」を形成します。
また、食事療法を補う方法としては、L-カルニチンやα-リポ酸の点滴やサプリメントがあります。これらには、脂肪燃焼効果や新陳代謝を促す作用があります。健康保険はききませんが「ダイエット点滴」などという名称で投与しているクリニックもあります。
術後の体調管理に苦労することが多いため、手術は最後の手段です。まずは、上記のような手段を用いて、再度体質改善から始めるとよいでしょう。
首藤紳介氏(湯島清水坂クリニック医師)
薬を使わない医療を実践。久留米大学病院小児科、大分こども病院、聖マリア病院母子総合医療センター等を経て、2010年より湯島清水坂クリニック(東京)に勤務。「福田−安保理論」をベースにした自律神経免疫療法により、「薬を使わない医療」を実践中。