7月6日から9月5日まで、南関東で期間限定騎乗を行っている吉田稔騎手(期間中は大井・上杉昌厩舎所属)は、前半の1カ月を終えてこう振り返った。
途中、背中の痛みが出て騎乗を休むアクシデントもあったが、慣れない土地で奮闘し、新しい環境に刺激を受けて充実した日々を送る。
そもそも、騎手デビューもまた地元ではなかった。父は佐賀競馬の吉田昭調教師。騎手を志すのは自然な流れだったが、父のいる競馬場ではなく名古屋でデビューした。「名古屋に知り合いがいて、ダメだったら戻ろうくらいの気持ち。父も外で武者修行くらいに思っていたと思う」その思いはいい意味で裏切られ、1994年から2003年まで10年連続で名古屋リーディングに君臨。地方通算2167勝、JRAでも136勝を誇るトップジョッキーとなった。
地方出身の騎手がJRAへ移籍するなか、吉田騎手も2003年から騎手免許試験を受け始めている。「再度JRAの騎手試験に挑戦したいし、野球選手がメジャーリーグを目指すように、より大きい舞台を目指したい気持ちはある。競馬は1+1が2にならない世界。正解がないからこそ、乗れる限り乗りたい」
佐賀から名古屋、名古屋から全国へ。活路は自らの腕で切り開いていく。