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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第159回 繁栄への道

 昨年12月31日の大みそか、ドイツのケルン市で信じられない「事件」が発生した。ケルン中央駅前で、酔っぱらった男たち約1000人(!)が騒ぎを繰り広げ、一部のグループが通り掛かった女性を囲み、金品やスマホなどを強奪し、さらには性的暴行を加えたのである。ケルンの警察当局は1月10日、新年行事中に発生した暴行事件数が516件に達し、その容疑者の大半が難民申請者と不法移民であったと公表した。
 ドイツには2015年に100万人超の難民・移民が流入したが、その多くが若い男性であった。仕事もなく、しかも言葉が通じない異国で、かつ「仲間」がおり、一応、生活の心配はない。筆者は、ドイツのネイティブな国民と移民・難民たちとの間で「衝突」が起きるのは避けられないと繰り返してきたが、この大みそかの「事件」(インターネットに投稿された映像を見る限り「暴動」だが)は、さすがに衝撃的だった。

 ちなみに、ドイツは人口の20%超が移民もしくは「移民系」となっており、政府自ら「ドイツは移民国家である」と認める状況に至っている。とはいえ、別にドイツは当初から移民国家化を目指し、外国人を受け入れたわけではない。
 第2次世界大戦後に極端な“人手不足”に陥った西ドイツ(当時)は、「労働力を補うため、やむを得ず少数の外国人を受け入れる。しかも一定の期限付きで、ローテーションを原則とし、永住も認めない。外国人労働者単身のみの入国しか許さず、妻子同伴は禁止。期限が来た場合には必ず帰国させる」と、どこかで聞いたようなスタイルで外国人労働者を「慎重に」受け入れ始めたわけだが、結局は、「外国人がいなければ、ドイツ経済が成り立たない」結果になり、なし崩し的に「移民大国」への道を歩み、現在に至る。
 そして、100万を超える難民・移民が2015年に流入し、ドイツはもはや、国民国家を今後も維持できるのか、疑問符を付けざるを得ない事態になっているのだ。

 話しは変わるが、筆者は日本を亡国(国民が主権を失う、という意味)に導く「3大嘘」は、以下三つであると確信している。
 「国の借金で破綻する」
 「日本は公共投資をやり過ぎた」
 「日本は人口が減って衰退する」
 無論、他にもいろいろと嘘はあるのだが、とにもかくにもこの三つは悪影響が大き過ぎる。

 特に日本国で暮らす日本国民に「閉塞感」「絶望感」を与えるのは、人口問題(に関する嘘)ではないだろうか。日本の「人口問題」(問題があるとして)は、
 「日本は人口が減って衰退する」
 といった情緒的かつ意味不明な話ではなく、生産年齢人口対総人口比率の低下なのだ。

 日本の生産年齢人口比率はバブル期には70%程度だったのが、直近の'15年7月のデータで60.78%。少子高齢化が継続している以上、60%を割り込んでくるのは確実だ。
 「だから大変だ」ではなく、今後の日本は人類が経験したことがない“超人手不足”の時代に突入すると理解するべきなのだ。
 そして、人手不足を解消するための「解決策」を間違えなければ、わが国は再び繁栄への道を歩み始める。さらに、少子化の主因である若い世代の実質賃金低下も食い止められ、所得増と雇用安定化が定着すれば少子化が解消し、そのうち人口も戻り始めることになるだろう。

 人手不足解消のための正しい「解決策」は、もちろん「外国人労働者を」ではなく、生産性の向上だ。同じく“超人手不足”だった高度成長期と同様に、生産性向上で人手不足(=供給能力不足)の解消を図れば、わが国は普通に高い成長率を取り戻せる。
 生産性の向上のためには、設備投資、人材投資、公共投資、技術開発投資という四投資を「リスク」を受け入れた上で拡大する必要がある。生産性向上で供給能力不足が解消すれば、GDP三面等価の原則により「=生産者の所得拡大」となり、国民が豊かになる。豊かになった国民は、消費や住宅投資を増やすため、需要(=名目GDP)が拡大し、またもや供給能力不足、人手不足の環境に陥る。
 生産性向上で供給能力の不足を解消すると、結果的に人手不足になる。さあ、どうするべきなのか。もちろん、さらなる生産性の向上あるのみだ。

 断言するが、経済成長は、特に日本のような人口大国では「供給能力不足=人手不足」環境下における生産性の向上以外では起きない。そして、わが国は人口構造上、国内のすべての産業、企業、そして地域が“超人手不足”になることが確定しているのだ。
 何と、幸運な国なのか!
 すでに介護や土木・建築、運送など、一部の業界で“超人手不足”が深刻化しており、供給能力不足を埋めるための生産性向上に向けた「現場の努力」が始まっている。それにもかかわらず、安倍政権は人手不足を「生産性の向上」ではなく、外国人労働者受け入れで補おうとしている。最悪だ。まさに、かつてのドイツが歩んだ道そのものである。

 政府が明らかに間違っている場合、国民はどうすればいいのか。とりあえず、国民や政治家が先の三つに代表される「亡国の嘘」が間違っていると認識しなければならない。逆に言えば、それだけでいいのだ。
 正直、現在のドイツが抱える移民問題について「正しい解決策」を出せと言われても、「無理」としか言いようがない。繁栄への道が存在しない他国と比べ、わが国は信じられないほど幸運であることを、ぜひとも知ってほしいのだ。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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