まず、審査基準について「俺はね、将来性なんかわからんからね。ただ、その時、笑いの数の多いヤツが点数ええわ。俺はそうやって決めてたね」と自分なりの基準を設けて審査に臨んでいたという。ただ、「笑いの好みはあるでしょうね。そういう感性がある人はそういう方によく点数入れるし。俺はこれがおもろいと思ったら、こっちに入れるし。みんな違うもん、笑うところがね」と当然、審査員によって感性が異なると強調した。
お笑い賞レースでの「優勝」という定義には、「戦うコンテストやから、その時上手けりゃみたいな。だからオリンピックでもそうやんな。その時の1位が1位やし、2回目は2位が1位かも分からんしね」と説明し、「一番ウケた人が優勝するって。一番ウケた人が優勝しなかったらブーイングになるで。笑いが多いのが優勝するのは当然」と主張した。
洋七が力強く説いているのは、チャンピオンは「年間」という意味合いではなく、あくまでも「一大会」で面白かったコンビであるということ。例えば、「THE MANZAI」や「キングオブコント」で優勝したということは、その大会でのチャンピオンであり、必ずしもその年度で最も面白い芸人ということではない。素人や一般視聴者にとっては非常に勘違いしやすいポイントだ。
そして、ネット上で頻繁に議論されている“一般人が審査すること”については、「プロと視聴者が一緒になったほうがええねん」と一般人が審査に参加することに賛成した。例えば、「THE MANZAI」では毎年、テレビのリモコンから投票できる「国民ワラテン」方式を採用。視聴者の投票が最も多かったコンビに1ポイント加算される方式である。ただ、お笑いを経験している審査員は、ネタの微妙な違いが分かるようで、「そういうのはプロは、分かる訳やんか。ああ、今の遅いとかね。だから、専門家も入れて素人もいれなあかんわな」と持論を展開した。
お笑い賞レースの審査には様々な争点があるが、洋七が一番問題視したのは「敗者復活」システム。かつての「M-1」、そして現在の「THE MANZAI」は同システムを採用している。「なんか見てる方はそっち(敗者復活者)を盛り上げてしまうもんな。『おもろいんちゃう!?』って。これ見方変わんねな。だから、敗者復活制度は賛成しない。やっぱり、きちっと10組なら10組選んで戦った方がええ。(敗者復活組が)変にウケたりするからな」と否定的だった。
また、以前に明石家さんまが「お笑い芸人は他人の芸を審査すべきではない」という旨を主張していたことには、「ある程度、売れた人を審査するのは失礼やけど、若手はええんちゃうん!? そうせんと誰をどう売って言いか、テレビ局も分からないよ。たぶん、さんまが言うてんのはそうやで。10年も20年もやってたヤツを点数付けんのは腹立つやろ」とさんまの言わんとすることを解説した上で、自身の考えも示した。
最後に、「5年でも10年でも自分たちで期限決めなきゃダメ。40、50歳までやったって絶対売れない。真剣にやってたら、例え一般人に戻っても大丈夫や」と若手芸人たちに厳しさと優しさが入り交じったエールを送った。
【プロフィール】
島田洋七/1950年2月10日生まれ/広島県出身/オスカープロモーション所属/1975年に島田洋八と漫才コンビB&Bを結成し、漫才ブームを牽引した。TOKYO MX「バラいろダンディ」金曜レギュラー