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総務省を屈服させた孫正義の厚顔 プラチナバンド獲得!(1)

 「今日は嬉しい。今夜の酒はうまいぞ」
 3月1日夜、ソフトバンクの孫正義社長は記者会見で満面の笑みを浮かべた。総務省が同社に、900メガヘルツ帯の割り当て免許を与えたのを受けてのことだ。

 この新周波数は「プラチナバンド」と言われ、障害物を迂回して届く良質な電波帯。地上波放送に使われた700〜900メガヘルツの周波数帯が地デジ移行で空いたのを機に、総務省が携帯電話会社の1社に絞って割り当てることになり、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、イー・アクセスの4社が手を挙げた。1月末に各社は事業計画を提出。うちドコモとKDDIは既に800メガヘルツ帯を所有していることから「電話が繋がりやすい」と評価されていたが、一方ソフトバンクとイー・アクセスの2社はプラチナバンドを所有しておらず、「繋がりにくい」とされてきた。
 当初から、競争の原則もあって「ソフトバンクと業界4位のイー・アクセスとの一騎打ち」と見られていたのだが、2月末とされた割り当て業者決定の時期が迫った頃、にわかに風向きが怪しくなった。
 総務省は2月10日、総務相の諮問機関である電波管理審議会に事業者選定の判断基準となる事業計画を報告。各社とも膨大な事業計画を提出していたが、公表されたのは一部の抜粋のみだった。関係者はそこに、「どうしてもソフトバンクに決めたかった総務省の秘めた魂胆」を指摘する。

 公表された設備投資額はソフトバンクの8207億円が断トツで、以下KDDI2536億円、ドコモ2313億円、イー・モバイル1442億円と続いた。新周波数が割り当てられた場合のサービス開始時期もソフトバンクが今年の7月と最も早く、ドコモは今年11月、KDDIは来年1月だった。これを踏まえ、翌日の新聞各紙は、まるでソフトバンクに決定したかのように書きたてたのだ。
 この“外堀作戦”に気を良くしたのか、孫社長は「プラチナバンドはわれわれが獲得するのが当然。他社に割り当てるならば総務省を訴訟する覚悟」と吼えまくった。
 「これを聞いたイー・アクセスの千本倖生会長は『総務省への恫喝じゃないか』と激怒した。言い換えれば孫社長は目的のためには手段を選んでいる場合ではなかったということ。もし総務省がヘソを曲げてイー・アクセスにプラチナバンドを与えた場合、彼は訴訟どころか、敵対的M&Aを仕掛けてイー・アクセスを乗っ取るのではないかとまで陰口された」(業界関係者)

 実を言うと、ソフトバンクがライバルとの意気込みの違いを見せ付けた8207億円という設備投資額には“トリック”がある。同社は現在使用する2ギガヘルツ帯の電波特性に合わせ、小型基地局主体の通信網を構築してきた。そのため、ドコモやKDDIに比べ鉄塔の保有数が少なく、電波割り当て後に多くの大規模工事を必要とする。だからこそ金額が突出したわけで、新周波数獲得に懸けた意気込みの差を反映したとは限らない。
 とはいえ、この数字を見せ付けられれば、世間の目には「孫社長の熱意の表れ」と映ったとしても無理はないだろう。

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