彼はこんな体験をしたという。
ある駅に勤務していた時の事、病人が連続で発生した近くの駅に応援に行かされた事があった。
あまり良い噂の無い駅だったのであまり気乗りしなかったのだが、上の指示は絶対である。
Wさんはその駅でマグロ処理の応援にあたった。
だが、どうしても礫死体の頭部が見当たらないのである。
仲間と何度も付近を捜索したが発見できなかった。
上司の命令で通常の倍のエリアで頭部の捜索が続けられたが、とうとう断念せざるを得なかった。
悲惨なのは、礫死体の遺族である。
礫死体は地元でも評判のスポーツ女子高生であった。
何しろ水泳部の有力選手だったらしく、朝に事故が起こったというのに、夕方には水泳関係者は現場に押し掛けて大変な騒ぎとなった。
「○○ちゃん なんで自殺しちゃったの〜」
「○○先輩、水泳に行き詰まってたんですか」
同じ水泳部員は皆一様に泣いている。
それはそうである。
チームのエースがいなくなったのである。
瞬く間に現場は花で飾られた。
(まさか、頭がみつかってない、なんて言えないよな)
Wさんがそう思っているのとは裏腹に、現場に集まり泣きじゃくる生徒や、うなだれる教師は去ろうとはしなかった。
そんな時、駅に一本の電話が入り駅の職員が応対した。
電話主は駅付近の学校の教頭である。
「今日の朝、おたくの駅で人身事故がありましたよね。話によると、たしか〜女子高生が飛び込み自殺したとか…あの、つかぬ事お伺いしますが…その礫死体の首ってみつかりましたか?」
「いえ、具体的には申し上げられませんが、何故そんな事を聞くのですか」
「ええ〜、実はうちのプールに女性の生首が浮いているんです」
「…!!」
バラバラになった女子高生の首は、線路沿いにある学校のプールに浮いていたのだという。
ぷかぷかと水面を漂う女子高生の首。
それからしばらくその界隈は首の噂で持ちきりであった。
生首になっても水泳を続けた女の子の話題で…。
監修:山口敏太郎事務所