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奈良の神社話その十三 神通力で結ばれた長大な地下水脈──奈良市・遠敷(おにゅう)神社

 一般に「お水取り」と呼ばれる東大寺二月堂の修二会。豪快なお松明の乱舞とともに、関西に春が到来するといわれる。3月1日から二週間にわたる行事の代名詞となったこの「お水取り」は、二月堂北東にひっそり鎮座する遠敷神社と関わりが深い。

 “二月に修める法会”つまり修二会は、その名称通り本来旧暦2月1日から行われていた。東大寺を開山した良弁僧正の高弟・実忠和尚によって始められて以降、一度も途絶えることなく千二百年以上続けられているという。
 お水取りは12日、境内の井戸「若狭井」から観音様にお供えするお香水を汲み上げる儀式を指す。

 「お水取り」は、遠く離れた福井県小浜市で3月2日に行われる「お水送り」とつながっている。これは若狭一の宮・若狭彦神社にほど近い遠敷川の河原・鵜の瀬に、若狭神宮寺境内の阿伽井戸から汲み出しておいたお香水を注ぎ込むもの。実は、この遠敷川の水が地下で通じる若狭井に到達し、汲み上げられると信じられている。

 昔、実忠和尚が初めて十一面悔過法(けかほう・修二会のこと)を行った時、諸国の神々を勧請された。ところが好きな釣りに興じていた若狭彦神こと遠敷明神は和尚の要請に遅れてしまう。この失態のお詫びとして、二月堂の本尊・十一面観音に遠敷の閼伽(あか)水を届けると約束された。遠敷明神は神通力によって遠敷川の水を二月堂の下まで導き、若狭井を湧出させたという。
 遠敷明神はこうして東大寺境内に祀られているわけだ。

 お水送りでは、神宮寺から鵜の瀬までの約2kmをお香水を運ぶ松明行列が川面を染める。申し込めば松明行列への参加も可能。福井の地で、火と水の祭典を体感してみるのもいいだろう。

(写真「鵜の瀬に注がれるお香水」)
神社ライター 宮家美樹

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