なぜなら、現在は「ポスト真実」と呼ばれる「客観的事実よりも感情的な訴えかけの方が世論形成に大きく影響する状況」(オックスフォード辞書による)があり、つまり「社会の基盤をなす客観的事実に基づく共通認識」が崩壊しつつある。そしてトランプ候補はその「ポスト真実」を追い風に当選したと考えられているためだ。ただ、ポスト真実をもたらした「客観的事実を装った感情に訴えかける陰謀論」そのものは、非常に古くから存在しており、古代ギリシアにおいても「デマゴゴス」として危険視されており、転じてデマの語源となっている。
各種メディアでも報じられているように、大統領選挙中にはトランプ候補にとって都合の良いデマがネットで広く共有され、主要なソーシャルネットサービスでは対策を講じざるを得なくなるほどだったとされる。しかし、デマはそれを受け入れる土壌が存在してこそ効果を発揮するものであり、それはネット社会が成立する以前からアメリカ社会を蝕んでいたのだ。
そのひとつが、陰謀論者へ極めて大きな影響を及ぼしたとされ、現在でもなお信奉者が絶えない「アイアンマウンテン報告」である。この「アイアンマウンテン報告」とは、匿名のアメリカ政府筋が1960年代半ばに組織した秘密委員会による調査研究結果をまとめたものとされており、そのテーマは「世界は完全な平和を迎えられるのか?」というものであったとされる。
そして、その報告内容は極めて衝撃的なものであった。
もし、世界が平和になって戦争がなくなれば、現在あるような国家は消滅する。
国や社会を存続させるためには、世界のどこかで戦争を続けねばならない。
そして、調査結果に震撼したアメリカ政府筋は、報告を秘密ファイルへ永久に封印したとされているのだ。(続く)