岡田武史とミラン・マチャラ、両指揮官の初顔合せは1996年アジア杯(UAE)にさかのぼる。この時、岡田監督は加茂周元監督の下でヘッドコーチを務めていた。日本は優勝候補と目されたが、マチャラ率いるクウェートに敗れ8強止まり。徹底して弱点を突いてくるチェコ人指揮官の老獪(かい)さを、若かりし日本人コーチは見せつけられたはずだ。
あれから12年半。岡田監督は98年フランスW杯に日本を導き、横浜時代には2年連続でJ年間王者に輝くなどキャリアを重ねた。07年12月には2度目の代表監督に就任。度重なる解任危機を乗り越えここまで来た。
一方のマチャラ監督もサウジアラビア、オマーンなどを率い「中東の魔術師」として名を馳せた。オマーン時代の04年には日本と3度対戦。すべて1点差負けだったが、ジーコジャパンを大いに苦しめた。07年のバーレーン代表監督就任後は、日本と肩を並べる勢いを見せる。昨年3月、岡田ジャパンに初勝利した時は「中田(英寿)も中村(俊輔=セルティック)も柳沢(敦=京都)もいない日本代表は、アジアのローカルチームだ」と挑発したほどだ。
岡田監督の方は「昨年3月と今年1月の敗戦時はベストメンバーが揃っていなかっただけ。苦手意識はない」と平静を装っている。今回の大一番に向けても2月の豪州戦(横浜)ほどの厳戒態勢は敷いていない。とはいえ、相手の裏の裏をかいてくるマチャラ監督に対し、バカ正直に挑んでもダメなことは分かっている。そこで直前練習では中村俊輔をボランチに置く4-3-3などの複数の布陣をテスト。かく乱作戦に出ているようだ。
老獪さでは敵将の方が上だろうが、岡田監督もふてぶてしさでは負けていない。狸と狐の化かしあいはどちらが勝つのか。