「あしたのジョー」では入所した主人公の矢吹丈が、“牢名主”西寛一(後のマンモス西)の指示で「ねじりん棒」やら「パラシュート部隊」といった壮絶なリンチを受けるシーンが有名だろう。
そんなリンチが本当に行われるのか?答えは「個室だったんでリンチどころか、他人と話すことすらなかった」。光浩が収監されたのは“練鑑”の最上階にある個室。要は独房である。ここはとりわけ危険な人物が入れられる場所で、光浩は“VIP”扱いされたわけである。
今の“練鑑”はホテルと見まごうほど立派な建物で、監視用の設備も万全。看視は館内を四六時中見回っていて、何か騒動が起きれば直ちに駆けつけ、アッという間に鎮圧される。丈や西がいたころの、戦後間もなく普請された建物とは全く別物である。
丈が「あしたのために…」で始まる丹下段平からの葉書でパンチを学んだのは“練鑑”の独房だった。大部屋の連中を叩きのめしたため、独房に移された。独房は、それほど危険人物を収監しておく場所なのだ。
光浩にとって独房入りは一種の“勲章”だったに違いない。なにせ“ワル中のワル”というお墨付きをもらったようなもの。光浩自身も入所したてのころは、そんな気分を抱いていたのだろう。
しかし“練鑑”での過酷な生活は、次第に光浩を打ちのめす。そして、人生観が180度変わる出来事に遭遇する。