「すき家にとって最大の生命線は、深夜の1人勤務(ワンオペ)です。去年はバイトなどの造反で取りやめる店舗が続出した。これを完全復活するには、人件費を引き上げて高給優遇するのが早道です。その資金稼ぎこそ、牛丼の値上げに他なりません」(証券アナリスト)
ただ、一足早く値上げした吉野家にしても客足は鈍く、2月の来客数は前年比18%も落ち込んだ。すき家が、その二の舞いを演じるようだと目も当てられない。何せ、ワンオペ体制が袋だたきに遭った結果、親会社のゼンショーHDは今年3月期の最終赤字が102億円(前期は11億円の黒字)の見通しで、従来予想(75億円の赤字)よりも悪化する。すき家の場合、全国約2000店舗のうち、スタッフ不足で深夜営業の再開にこぎ着けない店舗が3月末でまだ616店舗ある。
「すき家は昨年8月に牛丼価格を一部値上げしました。それでも大手3社では、唯一の200円台だったのですが、期待に反して客足はサッパリでした。当時は商品内容を見直さず、価格だけを引き上げたからと言われました。その反省から今回は牛肉やタマネギを2割増量しましたが、客足が急回復する保証はありません。だからこそ業界には『再び価格競争の体力勝負を仕掛けないとも限らない』と警戒する声さえ渦巻いています」(関係者)
世間からどう陰口されようと、すき家の真骨頂はワンオペと価格の安さを全面に出した戦略である。その結果として業界のトップに躍り出ただけに、そのうち“伝統”の血が騒ぐかもしれない。