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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」★共通テストに記述式は要らない

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提供:週刊実話

 すっかり定着したセンター試験が本年度を最後に廃止となり、来年度からは「大学入学共通テスト」が始まる。改革の最大の目玉は、国語と数学に記述式の問題が導入されることだ。マークシート方式だと、どうしても知識を問うことになり、考える力を見極めるには、記述式の導入が不可欠だというのが、改革の理由だ。例えば、国語の共通テストでは、文章を読んだうえで、最大120字で解答する問題が3問出題されるという。

 ただ、試験後2週間以内に採点を終わらせないといけないため、文部科学省はおよそ1万人の採点者が必要になるとみている。当然、大学教員だけでは足りないから、大学院生や教員の退職者だけでなく、アルバイトの大学生を活用することも考えているという。

 それに対して「大学生に採点をやらせて大丈夫か」と心配する声が、あちこちから上がっている。慣れていない大学生が採点すると、不公平が生じるのではないか、というのだ。

 実は、私は大学生時に進研ゼミの赤ペン先生のアルバイトをしていた。ただし、アルバイトは数カ月しか続かなかった。私の添削のやり方に本部からクレームがつき、話し合っても落としどころが見つからなかったからだ。いくら採点基準を明確化したところで、採点者の個人差をなくすことはできない。同じ音楽を聴いても、感動する人と首をかしげる人に分かれるのと、同じことが起きるのだ。

 採点のバラツキは、採点を大学教員がやったとしても、ほとんど変わらない。もしかすると、入試慣れしていない大学教員がやったほうが、バラツキが大きくなるかもしれない。記述式の採点で、不公平をなくすために一番よい方法は、1人の採点者が、全員分の採点を一気にやることだ。

 私は大学で300人以上の履修者がいる講義を2つ持っている。定期試験の採点をするときには、できるだけ1日で終わらせるようにしている。それでも、採点をしているうちに、基準がずれてくるので、常に最初に採点した数枚の答案を見ながら、基準を確認している。しかし、共通テストは、50万人程度の生徒が受験するから、1人が採点するのは不可能だ。だから、どうしても記述式を導入したいのであれば、私は人工知能に採点させるべきだと思う。人工知能に解答を読ませて、プロの採点結果を学習させる。おそらく1000人分くらいの解答を読み込ませれば、精度が高く、短時間で処理ができ、公平な採点が可能になるだろう。

 ただ、私の頭には大きな疑問が残っている。それは、そもそも記述式が本当に必要なのか、ということだ。

 現在のセンター試験には、考えて答える問題が、すでにたくさん盛り込まれている。わざわざ記述式にしなくても、考える力はいまでも試験対象になっているのだ。マークシート式の唯一の欠点は、適当にマークをしたものが、たまたま当たってしまうことがあるということだけだ。

 しかし、それも選択肢の数を増やすだけで、ほぼ解消できる。いまのセンター試験は5択が多いが、それを10択にするだけで、偶然の正解を防止することが、ほぼ可能になるのだ。

 いまからでも遅くない。新たな不公平を生む可能性があり、少なくとも確実に無駄なコストを生み出す記述式は中止すべきだろう。

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