後輩のジャニーズタレントに比べると、テレビ露出が断然低い森田。それは、自他ともに認める人見知りで、口下手なところに起因するが、舞台役者としての腕は超一級。V6で、同じくミュージカル道を究めている坂本昌行に引けを取らないものがある。
そもそも、森田が舞台と運命の出会いをはたしたのは05年。劇団☆新感線からのオファーだった。まったく興味がなかったため断ろうとしたが、マネージャーの強い説得で受諾。初舞台『荒神〜AraJinn〜』は、まだキラキラアイドルを再現させるに過ぎなかったが、新感線はそのおよそ3年後(08年)にも、再びオファーした。『いのうえ歌舞伎☆號「IZO」』で、幕末の京都を震えあがらせた“人斬り以蔵”こと岡田以蔵を怪演すると、役者としてのスキルを高めた。
そして、同作を観劇して、その才能にホレたのが“巨匠”蜷川幸雄(故人)さん。ここで、“舞台俳優・森田”が本格的に起動した。蜷川さんは初のオファーを出すにあたり、事前に森田の大先輩にあたる東山紀之に「彼はどうなの?」とリサーチした。森田とはドラマ『喰いタン』(06年&07年)で共演していた東山に信頼を寄せてのことだったが、「すごくナイーブで、俳優としては抜群です」という返事があったことで、動いた。
10年、60年安保闘争を背景にした『血は立ったまま眠っている』で、社会の変革を夢見る若きテロリストを演じた森田は、業界関係者から高い評価を得た。そして、これを観て動いたのが宮本亜門だ。
三島由紀夫が原作の『金閣寺』で、生来の吃音から疎外感に悩みながら育った主人公を、森田に与えた。初演は11年で、再演が12年。11年には、ニューヨークで開催された『リンカーンセンター・フェスティバル』に招待された同作で、森田は人生初の坊主頭になっている。
宮本作品で跳躍した森田に、蜷川さんが再びオファー。13年の『祈りと怪物〜ウィルヴィルの三姉妹〜』は、KERAと蜷川さんの競作だったが、森田は蜷川版で主役を務めた。
そんな蜷川さんは今年8月、唐十郎=作の『ビニールの城』で演出を手掛け、森田、宮沢りえ、荒川良々を主演に抜てきしていた。しかし、稽古がはじまるのを待たずして、今月12日、肺炎による多臓器不全のため永眠。巨匠が絶った現実をいまだ受け入れられない森田だが、“ニナガワチルドレン”のひとりに加わったことは、一生涯の財産。『ヒメアノ〜ル』でどんな評価を得るか、楽しみだ。