10年以上も前の話になってしまうが、高野連に野球競技者の人口拡大について質問したことがある。しかし、対応してくれたスタッフはさほど関心を持っていないようだった。
今大会の公式プログラムによれば、野球部員数がもっとも少ないのは、南北海道代表・クラーク国際の34人。最多は八戸学院光星(青森)と佐久長聖(長野)の159人。100人以上の部員数を誇る高校は9校。90人以上の高校も多かった。「大量部員のなかから選りすぐった精鋭=強豪校」の図式は消えていない。一方、地方大会に目を移せば、部員数不足で出場すら危ぶまれる高校もないわけではない。大量部員数のマンモス校に行けば、レギュラーになるための競争も激しくなる。「それでも進学したい」と思うのは個人の自由であり、その野球部に魅力があるからだろう。今年の夏の甲子園大会に参加した高校は、全部で3874校。地方には少子化による経営難等で経営陣が統廃合を選択した高校もあり、それが参加校数を減少させた一因ともなっている。先の人口動態統計からも分かる通り、「子どもの人数」そのものが減少の一途から抜け出せていない。少子化対策は高野連の職責ではないが、参加校を急激に減らさない対策を考えるとしたら、部員数確保で悩む一部の地方高校を救済することだろう。
私見ではあるが、指導者復帰の資格取得が緩和されたことで、その講義を受講する元プロ野球選手が増えている。「低月収でも構わない。生徒たちとしっかり向き合う覚悟がある」とする元プロ野球選手を無名校に斡旋すれば、有望な中学生球児の進路選択にも影響を与えるはずだ。その学校に非常勤扱いの職員を増やす余裕がないのなら、その一部を高野連が負担しても良いのではないだろうか。
今年4月の理事会で高野連は熊本地震で転校を余儀なくされた野球部員に関する特例措置を決めた。通常、転校した野球部員は一年間公式戦に出られない規則になっているが、その対象外とするとし、熊本県外から転校する場合にも適用するとした。2011年の東日本大震災のときも同様の措置を取っており、大会運営に影響しかねない問題については、高野連は常に迅速な対応を見せている。
参加校数と部員数の減少については過去にも何度か議案に挙がっているが、こちらに対しても、迅速かつ斬新な改革案を示してくれるといいのだが…。(スポーツライター・美山和也)
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