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格闘技バブルはなぜはじけたか?

 数年前までテレビのゴールデンタイムで放送されていた格闘技番組が、ほぼ壊滅状態となっている。一時期は大晦日の特別番組で地上波の多くが取り上げていたほどであったのに、いまはその勢いはない。数十年続いていた格闘技ブームが去ったということであろうか?

 戦後日本のテレビは、力道山のプロレスからはじまり、日本最初のボクシング世界チャンピオン白井義男、キックボクシングの沢村忠と、常に格闘技ブームの渦中にあった。キックボクシングなど、主要テレビ局のほとんどが各局で毎週試合を中継していたほどである。
 キックボクシングブームが終わっても、ジャイアント馬場、アントニオ猪木というプロレス界の大スターがいた。全日本プロレス、新日本プロレス国際プロレスも毎週テレビのゴールデンタイムに放送されていた。ブルース・リーという映画スターの登場で、世界中に空手やカンフーに憧れる人々があふれ出た。
 また、アントニオ猪木は、ボクシングヘビー級チャンピオンであるモハメッド・アリとの対決をはじめとした異種格闘技戦は、格闘技ファンの心をつかんで話さなかった。猪木の異種格闘技路線は、やがて初代タイガーマスクである佐山聡や前田明といったプロレスラーに引き継がれていき、ショー的要素が強かったプロレスと違う、格闘技色の強い【UWF】という団体を立ち上げ人気となっていく。
 また打撃系格闘技も人気で、空手界の異端児といわれていた大山倍達が創始した極真空手が、少年マガジン連載の「空手バカ一代」が大ヒット。やがて極真空手から独立した諸団体が独立した。

 80年代から90年代では前述した【UWF】もいくつかの団体が分かれ、それぞれに人気があった。特に佐山聡は、プロレスとは違う総合格闘技団体【シューティング】という総合格闘技団体を創設する。この【シューティング】が、打撃技・投げ技・寝技を取り入れた格闘競技のプロ化の最初であった。
 アマチュアでは極真空手から分かれた東孝が【大道塾】という団体を81年に設立。打撃技を中心に投げ技や寝技を取り入れた競技を行なうようになり、この団体も人気であった。また、やはり極真空手から分かれた【正道会館】が93年に【K-1グランプリ】を開催し人気となる。
 そしてやはり90年代、、寝技が中心のブラジリアン柔術が、空手家やボクサーを次々と負かしていく姿に、日本中どころか世界中の格闘技ファンが愕然とした。
 テレビでは、日本では【K-1】が大人気なり選手を主人公にしたコミックも登場。また、打撃に投げ技・寝技も取り入れた【プライド】等の総合格闘技もテレビに登場するなど大人気となった。

 思えば戦後のプロ格闘技は、数年前まで絶えることなく人気があった。
 それがここ数年で急速に人気が落ちてきてしまっているのだ。
 原因は何か? おそらくは格闘技におけるロマンが薄くなってきてしまったせいではないであろうか?
 格闘技において、すべて出尽くした感があるのだ。
 いまや「ボクシングとプロレスどっちが強いか」とか「柔道と空手どっちが強いか」などという人すら少なくなってしまった。そして日本人の闘争欲も薄れてきているのではないだろうか?
 格闘技のジム経営者や道場主に聞くと、いまの時代、10代の入門者が少なくなってきているという。むしろ40代50代の人が「昔やりたかったけど」と入門してくる人が目立つという。

 格闘技の過激化、過剰化で格闘技はバブル化しはじけてしまったようだ。

巨椋修(おぐらおさむ)(山口敏太郎事務所)

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