彗星のごとく出現したダイバーシティは強運の持ち主だった。
驚くなかれ。デビューが今年の2回東京の未勝利戦(芝1800m)と遅れた理由を佐藤助手はこう明かした。「内臓が弱かったため、(育成牧場で)腸を切る大手術をした」
一般論をいえば、デビューを果たしたことだけでも奇跡的といえる。ところが、瞬く間に2連勝を達成。ラジオNIKKEI賞の有力候補になることを誰が予想し得ただろう。まさに、神のみぞ知るだ。
2連勝の中身も濃い。経験馬相手に1馬身1/4差の完勝を演じた初戦もすごいが、返す刀で500万戦をぶっこ抜いたレースぶりは次元が違った。差し、追い込み馬に不利な前残りの流れを上がり33秒3とメンバー最速の“鬼脚”で突き抜けたのだ。このときは手綱を取っていた横山典騎手も、それを見守っていた佐藤助手も全身に鳥肌が立ったという。
「この馬には最初からびっくりさせられてばかり(笑)。デビュー戦は1週前に腹痛を起こし、どうなることかと思った。2戦目は上がり(3F)で古馬並みの脚を使った。この時期に2連勝するのは簡単ではないし、潜在能力は相当高い」
さらに、佐藤助手はこんなエピソードを打ち明けた。「当初は2連勝の後、夏休みに入る予定だった。ところが、ノリ(横山典)が『ラジオNIKKEI賞でも勝負になるから、行きましょう』って」
鶴のひと声ならぬ横山典の進言で重賞挑戦が決まった。
中間は体を緩めずに乗られていたとあり、当然、仕上げに抜かりはない。また、初めての小回り福島コースについて佐藤助手は、「確かに2勝とも(広い)府中でピタリとハマッたが、そこはジョッキーがそつなく乗ってくれるでしょう」と鞍上に寄せる信頼は厚い。
夏の福島競馬を熱くさせるダイバーシティ。無傷のV3を達成すれば、いよいよ秋は菊花賞が見えてくる。