例えば昨年に就任した農林部会長。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が大筋合意に達したが、米の年間7万8400トンの輸入枠増など、麦、牛肉、豚肉、野菜など国内農業はいずれもずるずると後退し、段階的関税撤廃を飲んでいた。そのため農林部会は、農家の不安を受けた農水族の大反発が予想された。
「部会長など火中の栗を拾うようなもので、火だるまになるのは分かりきっているし、誰も引き受けたくない。安倍さんはその難役に進次郎氏に白羽の矢を立てたのです。当時、安倍さんはいつか自分に弓を引きそうな進次郎氏がここで潰れてもいいと思った節もある。何しろ農業分野にまったくかかわったことがないですからね。当然、農水族を中心に党内には冷ややかな見方と“小泉も終わりだな”という同情論が入り交じっていました」(ベテラン農水族議員)
ところがどっこい。その見方とは裏腹に、進次郎氏は精力的に各地の農家や関連施設を回り、若手農業者や農協の声などを丹念に拾い、農水族をいなして国内対策をまとめ上げて周辺関係者らを唸らせた。今はさらに、60兆円の農林中央金庫にもメスを入れようとして注目を集めている。
しかし、これを見た安倍政権は再び小泉氏を別の崖っぷちに連れて行く。
1月24日に投開票された沖縄県宜野湾市長選。自民、公明両党が推薦し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を否定しない現職と、移設反対を公約に掲げる新人による一騎打ち。普天間基地辺野古移転の命運を握る、乗るか反るかの天下分け目の戦いに、安倍政権は再び進次郎氏に白羽の矢を立てたのだ。
「自民党で唯一の遊説者だった進次郎氏は、老若男女に大人気。彼の応援が現職の約6000票の大差勝利に大きく貢献したことは間違いありません。逆に負けていれば、進次郎氏では力量不足だったとなっていても、不思議ではなかった」(宜野湾市議)
そして、今回の経済財政構想小委員会の事務局長だ。
小泉シンパが言う。
「安倍首相は、反原発姿勢の小泉元首相と同時に、息子についても人気度は認めているが“謀反”も警戒している。だから安倍政権の難役で潰れたらそれまで、成功すれば自分の点数と割り切っているのは明確です。一方で進次郎氏は、役を果たせば自分のパワーがアップし、逆に党内で安倍批判が高まると信じている。安倍は信長、進次郎氏は明智光秀。しかし現代版光秀は信長の寝首を掻き、次は秀吉の役をも狙う」
菅官房長官の“ポスト安倍”の腹は橋下徹前大阪市長という話もある。だが、その後のポストを虎視眈々と狙うのは、小泉父子なのかもしれない。