放射線医学総合研究所などのチームが、殺人事件の裁判員裁判などで、被告の情状を酌量して量刑を決めることに関わっている“脳領域”を突き止めた。これによると、金目当てや不倫のもつれ、育児疲れなど、さまざまな殺人事件の動機や背景、事情が異なることで、裁判員の脳の働きも変わってくるというのだ。
この研究は、法律の知識のない男女らに、「裁判員になったつもりで殺人事件の量刑判断をしてくれ」と依頼して行われた。
「実際の殺人事件と同じように、『不倫相手と結婚するために殺人を犯した被告』や、『介護疲れで殺人を犯した被告』など、被告に同情できるもの、できないものをあわせて32パターンも用意。この量刑を決める時の脳内活動を測定したのです」(医療ジャーナリスト)
この結果、被告に同情できる事件ほど、他者理解や道徳的な葛藤などに関わる脳の特定の領域が活発化したという。
「量刑によって活動の違いがみられたのが、感覚や感情などにかかわる大脳皮質の一部“右島皮質”。個人差があるが、ここの脳活動と情状酌量傾向が相関することが判明したというのです」(同)
つまり、ここが活発に働いている人ほど、減刑する傾向にあるというのだ。
主に殺人事件を取材している傍聴ライターの高橋ユキ氏はこう語る。
「介護疲れで家族を殺害したような事件の裁判員裁判では、執行猶予判決が出るケースもままあります。たとえば、一昨年5月には千葉地裁で、介護をしていた高齢の母親を殺害した女性被告に執行猶予判決が下されました。この被告自身うつ病に悩んでいたことや、義理の父親の介護も行っていたことがわかっています。今回の研究結果を見ると、被告の事情に、裁判員の感情が大きく動かされた結果なのかもしれませんね」
感情に関わる脳領域を活発化させることで減刑の可能性があるというなら、法廷で被告が泣いたり土下座したりといった、わざとらしい振る舞いも一定の効果があるのかもしれない。もちろん、弁護士のプレゼン能力も問われることになる。
逆に、これを悪用すれば、自分が罪に問われたときに減刑を勝ち取れるかも!?