「私がキャバクラで働いてみようと決めた時、まず最初に思ったのが六本木とかの高級な店で働くのは大変そうだなということ。だから私はあえて地方の店で働こうと思ったんです。求人誌を見て、時給の安い所ならばその分、仕事も楽だろうと」
美優は容姿や接客に自信が持てなかったため、レベルとしてはあまり高くなさそうなキャバクラで働くことを求めた。そしてなにより気楽に働きたいという願望が強かったという。だがそんな美加の甘い考えは、働き始めて早々に打ち砕かれることとなる。
「初日、まず控え室でのキャストのガラの悪さにびっくりしました。髪型やメイク、態度がヤンキーそのもので、タトゥーをしている子も多かった。控え室も散らかっており、地べたで携帯をいじる子までいました。キャバ嬢特有のゴージャスさを醸しだす雰囲気の子なんて誰一人いなかったんです」
ガラの悪さはキャバ嬢だけではなかった。客もまた酔うと暴言を吐いたり、セクハラする者が後を絶たず、店全体の雰囲気がよくなかったと美加は話す。だがもっともショックだったのはスタッフの対応だったという。
「私が客からセクハラなどの迷惑行為を受けていてもボーイ達は知らんぷりなんです。後で相談しても、“なんとか逃げてきてね”とか笑って言うだけで助ける気ゼロ。指名されているのに抜けれるわけないですよね。もう店の人間は誰も信用できませんでした」
そんな日々が続いたため、美加は夜の世界を棄てることを決意する。現在は居酒屋でアルバイトをしているという彼女だが、もしも夜の世界に戻ることがあれば、その時は体験入店をして、しっかりと店の雰囲気を見定めることが必要と最後に話した。
(文・佐々木栄蔵)