小学生の頃の話なのですが、休み時間、運動場で男子たちが遊ぶ様子をボーッと見ていたんです。その時、彼らは、どこかから拾ってきた手のひらサイズの岩でキャッチボールをしていたんですね。それが結構、重さがあるみたいで両手で相手の方に放り込んでいたのですが、軌道がズレて、相手の男の子は反射的にその岩をギリギリのところで避けたんです。その岩は彼の頭上を通過していったのですが、次の瞬間、頭から大量の血がダラ〜っと垂れてきて、私は悲鳴をあげてしまいました。どうやら避けたと思った岩は、頭を傷つけており、パックリ割れてしまったようです。それで彼は悲鳴をあげた私の方を振り向き、血だらけの表情でしばらく見つめ合いました。
その後、彼はすぐに病院へ連れて行かれたのですが、まだ幼かった私にとってその光景は衝撃的で、今でも彼が血だらけでこちらを見つめる顔を思い出します。なので、それから私は赤い物に拒否反応を示すようになりました。例えば、トマト系の料理とか、スイカも無理です。どうしてもあの時のことを思い出して気持ちが悪くなってしまうんですよね。
そんなある日、彼と名古屋に旅行に行った時のこと。彼は辛いもの好きで、名古屋で有名な担々麺が食べたいと言い出しました。でも、担々麺って赤い色をしているので、「私は無理」と説得。するとその日、彼はずっと機嫌が悪かったですね。それから数日後、彼の家に遊びに行ったら、いきなり担々麺を出されたんです。それで「これ食え! いつまでも食わないからお前はダメなんだよ。トラウマなんて自力で克服しろ!」と凄い剣幕で怒鳴ってきました。何度断っても、納得してくれなかったので、頑張って口に入れてみたんです。でも、やっぱり無理ですぐに吐いてしまいました。それでも彼は、私の頭を掴んで、強引に食べさせようとする。あの時は、胃に何もなくなるくらい吐きましたね。
その出来事があって以来、彼が怖くなり、関係は断ち切りました。
写真・spDuchamp