クランクインから、およそ4か月。現場は、指揮を執った松本を中心に、つねに笑いであふれていたという。特に、初共演となった香川照之とは、プライベートも一緒に過ごし、急速に距離を縮めた。そして生まれたのが、“松本ナポレオン超え伝説”だ。
松本は撮影期間中、とにかく寝なかった。2人は、ドラマ撮影の入り時間の20分前まで一緒にいることもあった。つまり、徹夜だ。そんな状態でも松本は、現場で仮眠や居眠りすることがまったくなく、そのテンションのまま、ハードで長い一日を終えた。そんな松本に香川が名づけたのが、「ナポレオン超え」。「1日3時間の睡眠だった」といわれるナポレオンに松本を重ねたのだ。
香川と同じく、ラーメンズ・片桐仁も松本と初共演。片桐は松本の10歳上なので、最初は礼儀正しく敬語を使われた。だが、慣れ親しんでからは、片桐の言葉を「聞こえない」で返すコントを仕掛けられ、そのツンデレ加減を楽しんだ。
そんなある夜、キャストだけで食事に行く機会があった。しかし、片桐は仕事の都合で1次会の寿司店に行けず、2次会からの参加となった。その際、「明石さん(片桐の役名)だけおいしいお寿司を食べられないねぇ」と嫌味たっぷりにイジってきた松本だったが、いざ2次会のバーで合流すると、紙袋を持ってきた。「はい」と手渡された紙袋に入っていたのは、寿司屋のちらし寿司。ほかのキャストに内緒で、松本はこっそり片桐の分を作ってもらっていたのだ。
ツンデレに、すっかりハートを射抜かれた片桐。オールナイトで過ごすほどの仲になった香川。男気たっぷりの松本は、99.9%、共演者に愛されているオトコのようだ。