そんな中、米マクドナルドの経営トップが先ごろ、業績低迷の続く日本マクドナルドホールディングスの一部株式売却を検討していると表明した。ところが、米本社は昨年末から投資ファンドなどと交渉しており、何もあらためて表明の必要はない。市場筋は「交渉を有利に運ぶためMBO(経営陣による買収)に含みを持たせ、決断を迫る作戦」と解説する。
背景にあるのは、米本社が希望する売却額と各社が提示した金額に「かなりの開きがある」(情報筋)ことだ。マック株の約50%を保有する米本社は最大33%を売却する方針で、時価総額から約1000億円の価格を提示したという。しかし、商談に名乗り出たベインキャピタル(米国)やペルミラ(英国)などの投資ファンドは「収益力から判断して希望価格は割高」と主張、交渉の長期化どころか「決裂に終わる可能性がある」との観測も浮上している。
そんな折も折、米本社が“売却”をあらためて表明したのである。今後、キーワードとして浮上するのは市場筋が口にしたMBOだ。
「マックは2期連続の大赤字で米本社が『このままでは生き残れない』とサジを投げたドロ船です。ところが株主優待への期待から個人投資家が買い支えるため、株価は割高で推移している。米本社が算出した1000億円の金額は、その株価がベースになっています」
そう前置きして、証券アナリストが語る。
「マックの株主優待は、バーガー、サイドメニュー、ドリンクの組み合わせによって食事券約1万円分の価値があることから個人に大人気。これがなくなれば個人投資家が“イチぬ〜けた”と離れて株価は急落する。裏を返せば、その段階での株価がマックの適正な市場価格となる。市場にくすぶるMBO観測は、商談が不成立の場合に米本社が現在よりもはるかに安い価格でマック株を買いあさって非上場会社にし、その後は遠慮することなく苛烈リストラを実施して会社を復活させるというシナリオにつながるのです」
米本社の“二方面作戦”は日本撤退の可能性も含んでいる。